のんのハイトーンボイス&弾き語りが心地よい! 6年ぶりの実写映画『星屑の町』がDVDリリース

長野辰次

のんのハイトーンボイス&弾き語りが心地よい! 6年ぶりの実写映画『星屑の町』がDVDリリースの画像3(C) 2020「星屑の町」フィルムパートナーズ

 芸達者がそろった映画『星屑の町』は、のんの出演パート以外も見どころが多い。横山やすしのモノマネで知られる大平サブローだが、「ハローナイツ」のリードボーカル役だけに歌唱力はかなりのもの。劇中曲「MISS YOU」は1996年にCDとしてリリースされている。「ハローナイツ」とはドサ回り仲間のベテラン歌手・キティ岩城役の戸田恵子も、アイドル演歌歌手として芸能界デビューした経歴を持ち、ステージでの歌唱シーンを楽しげに演じている。のんの周囲を固める共演陣の、人生の酸いも甘いも噛み分けた芝居がなんとも心地よい。

 昨今の“かわいいおじさん”ブームには便乗できそうにない冴えないオッサンたちで構成された「ハローナイツ」の中でも、とりわけ印象に残るのは有薗芳記演じる青木五郎だ。いつも斜に構えている五郎は、「ハローナイツ」の新ボーカルに愛を迎え入れるかどうかの話し合いで、最後まで反対し続ける。男たちだけでこれまで楽しくやってきたのに、若い女性を入れたらロクなことにならないと。ヒットしなくても、自分たちの好きな歌を歌い続ければいいじゃないかと主張する。

 五郎の気持ちはすごく分かる。せっかく成功するチャンスが目の前に舞い込んできても、尻込みしてしまう人は少なくない。現状を変えてしまうことに、不安を感じてしまうからだ。成功を夢見てすべてを失うくらいなら、現状を維持したほうがましではないかと。下流人生に慣れすぎてしまった男の役に、小劇場界の名優・有薗芳記はとてもよく似合う。

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 だが、憎まれ口ばかり叩く五郎も「愛&ハローナイツ」が評判になり、テレビ出演や新曲のプロモーションビデオの撮影になると、笑顔を見せるようになる。芸能界で生きている人間なら、やはり売れないより売れたほうがいい。人間とは実にゲンキンなものである。ずっとバイプレイヤー人生を歩んできた五郎こと有薗芳記が、慣れない笑顔を浮かべる。その様子を眺めているだけで、こちらの気分もほっこりとさせられる。

 新しい出会いがあれば、別れもある。それが人生だ。そして、映画のラストシーン。五郎こと有薗芳記は、本当にうれしそうな笑顔を見せる。ひとりのバイプレイヤーの表情を追っているだけでも、本作は充分に観る価値があるように思う。

(文=長野辰次)

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映画『星屑の町』
原作・脚本/水谷龍二 監督/杉山泰一
出演/大平サブロー、ラサール石井、小宮孝泰、渡辺哲、でんでん、有薗芳記、
のん、菅原大吉、戸田恵子、小日向星一、相築あきこ、柄本明
DVD発売中 4,700円+税
発売元/東映ビデオ 販売元/東映
(C) 2020「星屑の町」フィルムパートナーズ
https://hoshikuzu-movie.jp

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