稲垣吾郎&二階堂ふみが挑んだ創作の狂気! 手塚治虫の異色作『ばるぼら』が実写化!

長野辰次
稲垣吾郎&二階堂ふみが挑んだ創作の狂気! 手塚治虫の異色作『ばるぼら』が実写化!の画像1(c)2019 『ばるぼら』製作委員会

 SF冒険もの、歴史大河、医療ドラマ……、あらゆるタイプの作品を残してきた“漫画の神さま”手塚治虫。膨大な数に及ぶ手塚漫画の中で、異色中の異色作とされる『ばるぼら』が実写映画化された。創作に苦しむ人気作家の前に、酔っ払いのフーテン娘・ばるぼらが現われたことから、作家は次々と奇妙な出来事に遭遇することになる。

 ばるぼらは果たして作家の創作意欲を掻き立てるミューズなのか、それとも破滅に追い詰める魔性の女なのか。正体不明の謎めいたばるぼら役に、NHK連続テレビ小説『エール』に出演中の二階堂ふみ、ばるぼらに魅了される作家・美倉役に稲垣吾郎というイメージに合ったキャスティングとなっている。

稲垣吾郎&二階堂ふみが挑んだ創作の狂気! 手塚治虫の異色作『ばるぼら』が実写化!の画像2(c)2019 『ばるぼら』製作委員会

 創作意欲とエロスは、切り離すことができないもの。二階堂ふみの他にも、本作にはいろんなタイプの女優たちが登場する。抜群のスタイルのよさで美倉を虜にするまなめは、グラビア界で注目を集めた片山萌美。育ちのよいお嬢さまである志賀子には、手塚治虫原作ドラマ『人間昆虫記』(WOWOW)でヒロインを演じた美波。スランプに陥った美倉を支える良妻賢母気質の編集者・加奈子は、現在ブレイク中の石橋静河。こんな美女たちに迫られたら、どんな男もたちまち陥落するに違いない。

 そんな美女たちに日々求められる美倉だが、心の中の飢餓だけは彼女たちではどうしても埋めることができない。一方、ばるぼらは自由奔放で、男の言いなりには決してならない女だ。怪しい黒魔術さえ使う。でも、ばるぼらとなら地獄めぐりを体験してみてもいいと美倉は思うようになっていく。世間の煩わしさから逃れるように、美倉はばるぼらを連れて危険な旅に向かうことになる。

稲垣吾郎&二階堂ふみが挑んだ創作の狂気! 手塚治虫の異色作『ばるぼら』が実写化!の画像3(c)2019 『ばるぼら』製作委員会

 本作で特筆すべきは、1973~74年に発表された異色作『ばるぼら』の実写化を手掛けのが、手塚治虫の長男・手塚眞監督だという点だろう。これまでにも手塚作品は、妻夫木聡&柴咲コウ主演作『どろろ』(2007年)、玉木宏&山田孝之主演作『MW ムウ』(2009年)などが実写映画化されているが、作品のテーマ性そのものは未消化のまま終わっていた。その点、父・手塚治虫の漫画を初めて実写化した手塚眞監督は、手加減することなくテーマ性をぞんぶんに深掘りしてみせている。

 美倉とばるぼらが逃避行の旅に向かう後半は、かなりハードな展開が待っている。多分、フツーの雇われ監督ならレイティングなどを気にしてマイルドに済ませるだろう場面を、手塚眞監督はいっさいの妥協なしで撮り上げている。『ばるぼら』のテーマ、それは作家が心の奥に秘めている狂気性だ。ばるぼらは、美倉が心の奥に隠している狂気をごく自然な形で取り出して、そして解き放ってみせる。だからこそ、ばるぼらは美倉にとっての至高のミューズとなりえるのだ。

 手塚眞監督は幼い頃から父の漫画を読み親しみ、そして父と同じクリエイターの道へと進んだ。手塚眞監督は手塚治虫が作品に込めたテーマ性をしっかりと受け止めた上で、実写映画化してみせている。また、手塚眞監督の妥協なき演出に、きっちりと応えた二階堂ふみ、稲垣吾郎の熱演ぶりも評価したい。

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