TOKIO・長瀬智也が主演を務める連続ドラマ『俺の家の話』(TBS系)の最終話が3月26日に放送されました。
家族に内緒で覆面プロレスラー・スーパー世阿弥マシンとして活動しつつ、能楽の人間国宝である父・観山寿三郎(西田敏行)の介護と『観山流宗家』の跡取り修行に奮闘する主人公・寿一(長瀬)の姿を描いた同ドラマ。
前回、2021年の年末に寿一がプロレスの引退試合を迎えたところで終了となり、今回は22年1月15日の観山家の朝食シーンからスタート。一家団らんの食事を満喫し、翌日には寿一が出演する『新春能楽界』が行なわれるのですが……。
実は、寿一は引退試合中に起こった不慮の事故で亡くなっており、寿三郎だけがその事実を認識できず、“寿一の幻”を見ているのです。
その寿一の代役として腹違いの弟・寿限無(桐谷健太)が出演し、能の演目『隅田川』が公演されるのですが、愛児の死を知った母親の悲嘆を描いたこの作品が演じられる中で、寿三郎は次第に寿一が亡くなってしまったことを認識します。
そして、目の前に現れた寿一の幻に対し、これまで介護や跡継ぎ候補として頑張ってくれたことを感謝。人間国宝にはなれなかったものの、「観山家の人間家宝だよ」と、初めて寿一のことを褒めるのでした。
こうして寿三郎との別れを果たした寿一の幻は、結婚を約束していた志田さくら(戸田恵梨香)の前にも現れ、「俺の家を頼む」と告げて別れのキスをします。
そのさくらは寿一の弟・踊介(永山絢斗)と結婚し、寿三郎の後は寿限無が継ぎ、寿三郎は死ぬギリギリまで舞台に立ち続け……と、寿一の死後の“後日談”が語られたところで終了となりました。
前回のラストでは、寿三郎の残された時間があと僅か、という雰囲気だっただけに、寿一の死は視聴者の予想を裏切るまさかの展開でした。その寿一は、幼少期から寿三郎に褒められたことがないことをコンプレックスに抱いていたため、最後に父親から認められたことで成仏できたことでしょう。
能とプロレスという一見すると相容れない要素がテーマとなった今作ですが、特に今回は寿一と寿三郎が“別れの会話”をする背景として演じられた『隅田川』が、あの世とこの世の境界線を取り払う荘厳な雰囲気を漂わせる演出にひと役買っていました。
また、ジャンルは違えど、死ぬまで大好きな舞台に立ち続けたという想いは、寿一と寿三郎が“似た者親子”であることを浮き彫りにする効果もあったのではないでしょうか。
寿一の死という意外な展開がありつつも、最後までしっかりと寿一目線での“俺の家の話”を描き切り、感動のフィナーレとなりました。
(文=佐久間泰造)
<プロフィール>
高校卒業後、劇作家を目指し上京。舞台、映画、ドラマのレビューを中心にエンタメ系ライターとして活動中。メタボがちょっぴり気になる30代独身男。