高校生版「ボニーとクライド」を思わせる暴走劇! いじめっ子を制裁する『ファンファーレが鳴り響く』

長野辰次

高校生版「ボニーとクライド」を思わせる暴走劇! いじめっ子を制裁する『ファンファーレが鳴り響く』の画像3(c)「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会

 本作を撮った森田和樹監督は1988年の鳥取生まれ。2015年からニューシネマワークショップに1年間通い、映画づくりを始めた。高校時代は友達と普通に楽しく過ごしたが、学校を辞めることを真剣に考えた時期もあったそうだ。森田監督は吃音症ではなかったが、病気になったことで社会にハンデを感じるようになった心情を映画に投影していると語る。

「自分自身が血管の難病になり、他の人が普通にしていることを自分は頑張ってやって普通になることが、すごく悔しく、劣等感を抱えて今も生きています。そんな中、病気の治療中に、YouTubeで吃音症の方の動画を見て、ハンデを武器にしている姿が自分とも重なったんです」(森田監督)

 注目の若手俳優である笠松将と祷キララがメインキャストを務め、『冷たい熱帯魚』(2010年)の黒沢あすか、出演作が200本に迫る個性派男優の川瀬陽太、『さよなら渓谷』(2013年)での好演が印象的だった大西信満たちが脇を固めている。内容はハードな青春犯罪映画なれど、本作で商業デビューを飾る森田監督の背中を押すような温かさがキャスト陣の芝居からは感じられる。

高校生版「ボニーとクライド」を思わせる暴走劇! いじめっ子を制裁する『ファンファーレが鳴り響く』の画像4(c)「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会

 本作はもちろん、青少年たちに犯罪を促すことを目的にした作品ではない。でも、誰しも学校や職場といった閉ざされた人間関係の中で「こいつ、ぶっ殺してやりたい」と刹那的に思ったことはあるはずだ。当然、そんな短絡的な衝動は呑み込むしかない。では、溜め込みすぎた衝動はどうすればいいのだろうか。森田監督はこの映画を完成させることで、溜め込んだ鬱屈をスクリーンへと解き放ってみせた。その瞬間、森田監督の頭の中には、きっとファンファーレが鳴り響いたに違いない。

 ずっと自分の殻に閉じこもって生きてきた明彦は、二度と味わえない光莉との血みどろの旅を経験することで、気づいたときには自分の殻を粉々に打ち砕いていた。本作が描いているものは、生きづらさを抱える主人公たちが、必死でもがきながら閉鎖的な世界から脱しようとする姿だ。

「たくさんのいろんな人に観てほしいです。今、学校や会社で悩んだり、苦しんでいる方や青春を屈折させてしまった人たちに届けたいです」

 森田監督はそう語っている。

(文=長野辰次)

『ファンファーレが鳴り響く』
監督・脚本/森田和樹 出演/笠松将、祷キララ、黒沢あすか、川瀬陽太、日高七海、上西雄大、大西信満、木下ほうか
配給/渋谷プロダクション R15+ 10月17日(土)より新宿K’ s cinemaほか全国順次ロードショー
(c)「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会
https://www.fanfare-movie.com

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