高校生版「ボニーとクライド」を思わせる暴走劇! いじめっ子を制裁する『ファンファーレが鳴り響く』

長野辰次
高校生版「ボニーとクライド」を思わせる暴走劇! いじめっ子を制裁する『ファンファーレが鳴り響く』の画像1(c)「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会

 森田剛が連続殺人鬼役を熱演した『ヒメアノ~ル』(2016年)の吉田恵輔監督、TVドラマ版に続いて劇場版も公開された『宮本から君へ』(2019年)の真利子哲也監督、オリジナル脚本作『AI崩壊』(2020年)などの野心作を次々と放つ入江悠監督……。『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』をきっかけにブレイクした映画監督たちの活躍が続いている。今年の『ゆうばり映画祭』は新型コロナウイルスへの配慮からオンラインでの開催となったが、そんなオンライン映画祭で初披露された『ファンファーレが鳴り響く』が10月17日(土)より都内の映画館で上映されることが決まった。

 本作は、2019年の『ゆうばり映画祭』でグランプリ&シネガーアワードの2冠に選ばれた森田和樹監督の商業デビュー作。一見すると大人しそうな高校生の男女が傷害事件を次々と犯し、逃亡生活を送るという超過激なロードムービーとなっている。

高校生版「ボニーとクライド」を思わせる暴走劇! いじめっ子を制裁する『ファンファーレが鳴り響く』の画像2(c)「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会

 高校生の明彦(笠松将)は、吃音が原因でクラスメイトたちからいじめられる毎日を送っていた。母親(黒沢あすか)は過保護で、逆に父親(川瀬陽太)は無理やりに明彦を学校に行かせようとする。学校にも自宅にも居場所のない明彦の鬱屈はたまる一方だった。

 いじめっ子たちから逃げ回っていた明彦は、ある日、同じクラスで成績がよく、クールな容貌で一目置かれている光莉(祷キララ)にばったり遭遇する。路地裏にいた光莉は、野良猫を殺しているところだった。光莉は「いじめている奴らを殺したいとは思わない?」と明彦に問いかける。優等生の光莉もまた、生きづらさを抱えていた。ふたりはある事件をきっかけに学校を飛び出し、行く先々で凶行を繰り返す。

“青春スプラッタームービー”を謳った本作は過激なバイオレンスシーンが盛り込まれているが、それは現代社会を生きる若者たちの息苦しさを反映したものだろう。衝動的に突っ走る光莉を追うように、明彦も旅を続けることになる。光莉は明彦との逃避行を、「ボニーとクライドみたい」とはしゃぐ。ボニーとクライドは、アメリカンニューシネマの傑作『俺たちに明日はない』(1967年)のモデルになった実在の連続強盗犯だ。大恐慌下にあった米国では、銀行を襲うボニーとクライドは「義賊」ともてはやされた。光莉はクラスのいじめっ子たちに続いて、女性を性欲の捌け口としか見ない男たちや援交の噂のある代議士(木下ほうか)にも制裁を下そうとする

 淀みきった世の中を自分たちの手で浄化させることを夢見る光莉だが、いかんせん高校生の思いつきの行動であって、罪のない人たちが巻き添えをくらうはめになる。『俺たちに明日はない』のようにカッコよくはなれない、痛すぎる青春の暴走劇だった。

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