ギョーカイ的ドラマレビュー その12

高スペック・戸田恵梨香と低スペック・ムロツヨシは釣り合うか? 『大恋愛』第2回レビュー

編集部

 若年性アルツハイマーを患った医師と、引っ越し屋をしている元小説家の恋を描く『大恋愛〜僕を忘れる君と」』第2回。前回、自転車と衝突して、病院に運び込まれた北澤尚(戸田恵梨香)は、その足で間宮真司(ムロツヨシ)の家に行く。久しぶりに小説を書く気になったらしい真司のパソコンの画面には、昔懐かしいスクリーンセーバーがゆらゆら。

 と、そこに婚約者の精神科医・井原侑市(松岡昌宏)から電話があり、翌朝病院のロビーで会うことになる。そこで、侑市は、昨日の事故が撮ったMRI画像を示し、尚にMCI(軽度認知障害)の可能性があることを告げる。

 しかし、前回も同じようなことを言っていたが、「この画像のどこで分かるのか」と聞かれて「僕の経験からの直感だから」って、それでなんで分かるねん! ドラマの終わりのクレジットによると、和光病院の今井幸充医師という医療監修の先生がついているのだから、ちゃんと根拠を言ってほしい。

 尚から婚約の解消を言い渡されているのに、まず病気の話をして、婚約の件は「その話はまたにしよう」と言う侑市。自分との関係のことよりまずは尚の身を案じているとも取れるが……。

 さて、一方の真司の部屋には、尚の母親の北澤薫(草刈民代)が突然訪れる。どうして住所分かったんだっけ? 「どういう魔法をかけたのかしら? 娘とあなたは不釣り合いです」と真司を攻撃する薫に「おれは結婚なんて望んだことないです。娘さんに誘われたからやっただけです」と言う真司。おいおい、どうしたの? そして、「これで引っ越していただけないかしら」と、薫が差し出した札束を受け取る。普通、ドラマではこういう札束は突っ返すものなんだけど……。

 尚は、侑市から、簡単な計算や暗記のテスト─これは長谷川式簡易知能評価スケールと言われているものである─を受ける。結果、やはりMCIだと思われること。このままだとアルツハイマー認知症に進むが、進行を遅らせることもでき、発覚してから10年仕事をしている人もいることを告げられる。

 薫は、尚からMCIの診断を告げられ、衝撃を受ける。侑市との婚約は解消することに。侑市の母・井原千賀子(夏樹陽子)は、「早めに分かってよかったわ。健康なお嫁さんを探さなきゃ」と、侑市に言い、侑市はそんな母に「自分の研究対象の病気に彼女がなるなんて宿命を感じるけど…」としか言わない。結婚しようとした女性が病気だと分かったら、その女性を支えよう……とはならないのが、エリート同士のデータに基づいた結婚の行きつく先か。

 真司は、薫からもらった札束を嬉しそうに数え、尚を食事に誘う。真司が初めて予約したその店は、尚が常連になっている店だった。これは萎える。はりきって店を選んだら、自分より彼女のほうがその店に行き馴れてたらいやなもんである。自分よりも高い店に行きなれている女って誘いにくい。

 さらにその食事の席で、尚は真司に、「私気まぐれなのよ」と、やはり侑市と結婚することを告げる。本当は侑市には婚約の解消を伝えているのに。そして、入院して認知症を調べるための脳波検査、スペクト検査、無呼吸検査、アミロイドPETなどを受けた尚は、侑市から改めて、MCIのポジティブ(陽性)でああり、アルツハイマー病の前段階であること、健康的な生活を送れば、進行を遅らせられることを告げられる。そして、尚の希望で、今後も侑市が主治医として尚を診ることになる。

 失意の真司は引っ越しの仕事で、尚が侑市とのために用意した新居から出て行ったことを知る。このシーンを見たとき、最初尚が家を引き払うのにまた真司の会社に引っ越しを頼んだのかと思ったがそうではなくて、真司は隣のマンションの引っ越しをすることになって、尚の上の階の住人から聞いたのだった。何が起きているのか分からない真司の携帯に夜、尚から「助けて!」という着信が入る。尚は真司との思い出の店でひとり飲んでいた帰り、自分のいまいる場所が分からなくなってしまったのだ。駆けつけて自分の家に連れて行った真司に尚は、自分の病気を告げる。「驚いたでしょ」と言う尚に、真司は、「驚いた。尚が病気で喜んでる自分に驚いている。僕にはお金も学歴もなんにもない。尚の病気なんて屁でもなんでもない。尚がアルツハイマーでも心臓病でも腎臓病でも歯周病でも水虫でも、尚と一緒にいたいんだ」と、言い、ふたりはこれからの生活を共に過ごすことにするのだった。

 今回のポイントは、尚の病気を知ったエリート医師、侑市は、あっさり単なる主治医になるが、真司はむしろ喜んでいたこと。相手の病気があからさまにマイナスポイントとなるハイスペックの侑市と違い、かつては小説家だったとはいえ、いまは低スペックの侑市は、尚に病気というマイナスポイントが加わったことで、むしろハイスペック女子の尚と自分が堂々と向き合えるように思ったのではないか。そういった微妙な男の心理も踏まえつつ、侑市と真司の尚をめぐる三角関係が今後どうなっていくのかも注目である。あと、アップルパイはこれからもちょくちょく出てきそうだ。

里中高志(さとなか・たかし)
月刊誌などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

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