ギョーカイ的ドラマレビュー その11

 2013年、産婦人科医の北澤尚(戸田恵梨香)と、ワシントン中央医科大学でアルツハイマー病を研究する精神科医の井原侑市(松岡昌弘)は、お見合いで知合う。お互いに血液検査の結果を持ち寄り、身体の相性もチェック。データに裏打ちされた、エリート同士の非の打ち所のない結婚……のはずだった。だが、それでは面白くないのがドラマの世界。尚は、侑市という婚約者がありながら運命の人に出会ってしまう。さらに、若年性アルツハイマーという病が、尚の人生を予測不可能なものにする。

 結婚を控え、侑市と過ごすはずの新居に引っ越して来た、尚。その引っ越し業者の中に、お客である尚の家で、黒酢はちみつドリンクを飲んでいる冴えないスタッフ、間宮真司(ムロツヨシ)がいた。ちなみの、この引っ越し会社が、実在する社名であるアート引っ越しセンター。広告費ももらっているのだろうか?

 真司は、尚の蔵書を本棚に入れようとして、何かに気付いたように、その本を見つめる。それは、尚が愛読してやまない、『砂にまみれたアンジェリカ』という、若くしてデビューしながら最近新作を出していない作家の小説だった。

 尚は、尚の新居の水漏れトラブルを真司が解決してくれたことをきっかけに、真司を食事に誘う。「こうやってよく男を誘うんですか」と、及び腰な真司だったが、居酒屋で店長と店員が話している内容を勝手に想像してアテレコしてみせて、尚を楽しませる。別れ際にLINEを交換して、尚は、「シンジ」という名前を始めて知る。

 別の日、また尚はLINEで真司を誘うが、真司からは「結婚するんでしょ」と返事。それでも尚は「この間の店で待ってます」とLINEを送るが、店で待っていても真司は来ない。ひとりで食事をすませて尚が店を出ると、そこにはずっと店に入らずに待っていた真司の姿が。尚は、満たされない思いを、愛読書『砂にまみれたアンジェリカ』の文章を暗唱しながら表現してみせる。すると、「心の中ではなく腹の中です」と文章の覚え違いを真司が訂正する。「なんで知ってるの?」と言う尚に、気まずそうに真司が言った答えは「俺が書いたから」。このとき、尚は彼が、自分が愛読してきた小説の作者、間宮真司であることを知ったのだった。

 その日は公園で夜明けまで、児童養護施設育ちの生い立ちなどを尚に語りあかした真司。次の日にまた同じ居酒屋で食事をすると、今度は尚が外国人カップルの客の会話のアテレコをしてみせる。「結婚への快速特急下りてあんたの家にいきたい。連れてって」と、あてているのは実は尚の気持ち。「あたしたちも出ない?」と尚は真司に言う。

 そこは、尚の新居の豪邸ぶりとは対照的な、ボロアパート。「快速特急下りられんの。下りても道じゃないよ。砂漠だよ。砂漠歩けんの」と、尚を止めようとする真司に、尚は自分からキスをし、「あっち行こ」と、別室(というほど広い造りの家ではないが)に誘う。ドラマ第1回にして、キーパーソンの男性ふたりとHするスピード展開。こんなかわいい女医さんに積極的に迫られたら、さぞ嬉しかろうと思うのだが、「結婚やめる」という尚に、「もうちょっと考えたほうが……」とまだ真司は戸惑い気味である。しかし「快速特急下りて、砂漠を歩くって決めたの。後戻りはしない」と、尚の決意は堅い。

 尚は、真司から鍵を借り、合鍵まで作ってしまう。尚は、病院に戻ると、一緒にクリニックを経営している母、北澤薫(草刈民代)の制止を振り切り、侑市に婚約解消を伝える電話をする。侑市は突然の話に戸惑い、「結婚まであと1ヶ月ある。それまでに別れてくれれば目をつむるよ」と言う。

 一方、「間宮真司の新作読みたいなあ…」と尚に言われたことで、真司もその気になったのか、パソコンを引っ張りだして、何やら書き始めていた。2013年なのにパソコンのOSはWindows98。いつからパソコン使ってないんかい!

 その尚には、少しづつ若年性アルツハイマーの徴候が現れ始めていた。患者の名前を忘れたり、自分で作った合鍵のことも忘れて、真司のアパートの階段で待っていた。買物の帰り自転車と衝突して病院に運び込まれた尚は、MRIの検査を受ける。その結果を、アメリカから帰国した侑市がたまたま見て、「この患者さんはMCIの徴候があるね」と言う。しかし、この「この画像のどこで分かるんだ」と聞かれると、「説明できる所見はない。直感だ」って、医療考証を脚本段階で放棄ぎみ。このドラマのサイトによると、MCIとは、軽度認知障害。健常者と認知症の間の段階で、MCIになった場合、5年で約40%の人が認知症を発症すると言われている。診断画像のカルテの名前が自分の婚約者であることを知り、「嘘だろ……」と侑市が戸惑うところで、第一回は終わった。

 こんなにかわいい愛読者にせまられるなら、いい小説でも書いてみたいものだが、でも彼が間宮真司と分かる前から好きになり始めていたようなのは、自分が気に入る小説を書く男性というのは、感性で惹かれるのだろうか?

 TOKIOの松岡昌弘がまさかのフラれ役となり、ムロツヨシと戸田恵梨香のラブストーリーが、これから10年という長い期間の物語として展開するらしいこのドラマ。愛する人が記憶を失っていくというラブストーリーはすでにかなり使い古された設定ではあるが、ベテラン脚本家の大石静がそれをどう上手に料理してみせるか。第1回は戸田恵梨香がなかなか可愛らしく、これからシリアスな展開になるに従って、どんな表情を見せるのかが気になってくる。あまり深刻なだけのドラマになっては見ていてつらいので、最後まで可愛らしい尚の笑顔を見ていたいと思い始めている時点で、ドラマの制作者の術中にハマり始めているかも。

 なお、ドラマの最後には「若年性アルツハイマー病の症状や進行のスピードは多種多様です。このドラマは、医療監修をうけて制作されたフィクションであり、登場する人物・団体は架空です」というテロップが流れた。若年性アルツハイマーという病気を単に、ラブストーリーの道具立てとして都合よく利用するのか、それとも実際に悩んでいる患者のことも考えて、きちんと検証された展開にしていくのか。そのあたりもチェックしながら、このドラマを見ていきたい。

里中高志(さとなか・たかし)
「サイゾー」「新潮45」などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

戸田恵梨香が松岡昌弘をフッてムロツヨシにグイグイ! 『大恋愛〜僕を忘れる君と』第1回レビューのページです。エンタMEGAは、連載コラムの最新ニュースをいち早くお届けします。芸能ニュースの真相に迫るならエンタMEGAへ!