テレビの裏側をコッソリ暴露! 謎の業界人集団「チーム・スパイス」の業界裏日誌

【連載87】姑息な方法で後輩の手柄をひとり占めする先輩放送作家! その悪質な手口とは?

編集部
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「バカなヤツのことを気にしてもしようがない!」   

  怒りのリミッターが限界を越えようとしているTに、プロデューサーのSが声を掛けた。
  師走の居酒屋は忘年会シーズンということもあって、いつも以上に賑やかで、入店時は、お互いの声を聞きとるのもやっとだったが、アルコールが入るにつれて、自分たちも周囲に負けじと、大声でやり取りを続けていた。

  Tは業界5年目の放送作家。 学生時代から作家事務所に潜り込み、現在に至る。
  “リサーチ”が得意ということもあり、先輩作家たちに重宝され、その仕事ぶりで周囲の信頼を得ながら、レギュラー番組を2つ勝ちとった。
  ほぼ同期の連中がいまだにリサーチに追われ、作家として正式なデビューを果たしていないのを見ると、かなりの出世頭と言える。

  海外旅行と、サイクリングを趣味とし、好奇心旺盛ということもあって、若いながら鋭い発想をする。
  本人はジャーナリストか冒険家志望だったらしいが、先にこの業界に入っていた大学の先輩をときどき手伝っているうちに、テレビ制作が面白くなったというから、水が合ったのだろう。
  そんなTが今、怒りにうち震えている。

  放送作家は、“アイディア出し”という作業がある。
  すでに手掛けている番組内での新しい企画や、まったく0から立ち上げる新番組の企画などを定期的に提出している。
  アイディア出しは、とくに事細かく書き込む必要はなく、何行かでどんな企画をするかが分かれば良い。
  それをもとに会議が行われ、さまざまなディレクター、作家のアイディアが付け加えられていき、企画がどんどんブラッシュアップされていく。
  そして、方向性が固まったところで初めて、さらに細かい構成案や企画書が作成されていくのだ。
  ゆえに、もととなるアイディア出しは、土に種をまく作業といったところだろう。

  Tは先輩作家Kに頼まれ、いくつか新番組の企画案を提出していた。
  誰もが泉から湧く水のように、無限にアイディアが出てくるわけではない。
  加えて、何本もレギュラーを抱える売れっ子ともなれば、ゆっくり時間をかけて考えるヒマもない。
  そういう時は、後輩に仕事の一部を振って手伝ってもらうことがよくある。
  その見返りとして、薄謝ながらギャラをもらったり、別の仕事を振ってもらったり、お酒をごちそうになったりする。
  それが業界の暗黙のルールでもある。

  将来有望と目されているTの企画案がとおり、深夜ながら番組化が決定したのだ。
  しかし、Kはその企画の発案者がTということをスタッフに隠し、手柄をひとり占めしようと企てた。
  Kは番組化の事実を隠しとおし、新番組の初会議が行われる前日の深夜に、そのことをTに打ち明けたのだ。

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