「今が人生でいちばん楽しい」あやや、モー娘。に夢中なハロヲタたちの青春!! 松坂桃李がオタクな一面を垣間見せる映画『あの頃。』

編集部
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(c)2020『あの頃。』製作委員会

 あらゆる女性の欲望に応えてみせる高級コールボーイを体当たりで演じた『娼年』(2018年)、暴力団と徹底抗戦する熱血刑事に扮した『孤狼の血』(2018年)、先輩の死に疑問を抱くエリート官僚役で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に選ばれた『新聞記者』(2019年)ほか、俳優・松坂桃李は出演作ごとに大きく異なる顔をみせてきた。女優・戸田恵梨香と結婚し、公私ともに充実期にある松坂の最新主演作『あの頃。』が、2月19日より劇場公開中だ。本作ではこれまでの役とはまた違った、アイドルオタクを繊細に演じている。

 本作を撮ったのは今泉力哉監督。岸井ゆきの&成田凌共演作『愛がなんだ』(2019年)がスマッシュヒットし、新感覚コメディの旗手として注目を集めている。今回は「神聖かまってちゃん 」の元マネージャーとして知られる劔樹人(つるぎ・みきと)のコミックエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』(イースト・プレス)を原作にした実録青春もの。現在公開中の『すばらしき世界』でも好演している仲野太賀、お笑いコンビ「ロッチ」のツッコミ担当・コカドケンタロウ、今泉監督の新作『街の上で』(4月9日公開予定)でもタッグを組んでいる若葉竜也といった個性派キャストたちと、松坂とのコラボレーションが楽しめる。

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(c)2020『あの頃。』製作委員会

 物語の舞台となるのは、2004年の大阪。フリーターの劔(松坂桃李)はバンド活動がうまくいかず、人生のどん底状態だった。そんなときに劔が目にしたのが、当時人気絶頂期だった松浦亜弥が歌う「桃色片想い」のプロモーションビデオ。キラキラと輝く松浦亜弥を見ているうちに、劔はボロボロと泣き出してしまう。あややファンになることで、劔の人生は大きく変わり始める。

 松浦亜弥やモーニング娘。らが所属する「ハロー!プロジェクト」のマニアたちが集まるトークライブに、劔も参加。トークライブは爆笑ものだった。その打ち上げに劔も呼ばれる。藤本美貴推しのコズミン(仲野太賀)、後藤真希推しの西野(若葉竜也)らが、ハロプロ全般推しのイトウ(コカドケンタロウ)のマンションに集まり、「ハロプロ」のビデオを見ながら夜更けまで盛り上がる。社会のどこにも自分の居場所はないと感じていた劔にとって、アイドルオタクたちの集いはとても心地よかった。

 週末はトークライブの仲間たちで集まる日々が続く。一般女子には縁がない分、AV女優の握手会で大はしゃぎする。トークライブをいつもディスるネットストーカーとのバトルも勃発。劔の発案で、モーニング娘。コピーバンド「恋愛研究会。」を結成。トークライブで、モー娘。の名曲「恋ING」をみんなで熱唱する。「中学10年生の夏休み」みたいな時間を、劔は仲間たちと過ごす。彼女はできないし、将来への不安はあるけど、それでも劔たちは「今が人生でいちばん楽しい」と思えた。遅れてやってきた、青春時代だった。

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(c)2020『あの頃。』製作委員会

 松坂桃李は作品選びが実にうまい。彼ぐらいのネームバリューとルックスなら、いくらでもかっこいい役や話題作の主演オファーが届いているはずだ。でも、人気俳優なら躊躇するようなR18指定の『娼年』や政治サスペンス『新聞記者』のような難役に、果敢に挑んでいる。『蜂蜜と遠雷』(2019年)は主演作ではないが、若き天才ピアニストたちの中で自分の才能のなさを自覚している年長の音楽コンクール参加者を人間臭く演じることで逆に印象に残った。作品の公開規模やクレジット順にこだわることなく、純粋に面白くなりそうな企画や演じがいのある役をチョイスしている。本作でも、憧れのアイドル・松浦亜弥との握手会に当選し、対面するまでのドキドキする瞬間をオタクらしくリアルに演じている。ちなみに松坂桃李はゲームオタクだそうだ。演じる役の振り幅の大きさが、役者としての大きな魅力となっている。彼のような作品の選び方をする俳優や芸能事務所が増えれば、日本のエンタメ界はもっともっと面白くなるだろう。

 本作を撮った今泉監督は、劇映画デビュー作『こっぴどい猫』(2012年)をはじめ、恋愛コメディで人気を博してきた。片想いをテーマにした作品も多く、本作でもアイドルオタクたちの推しアイドルへの純粋な想いをきっちりと描いてみせる。たとえ片想いであっても、誰かを好きになることで生きることが楽しくなってくる。片想い、上等! アイドルオタク、最高!! 今泉監督作品には、生きることを肯定する温かさが溢れている。

 軽快な作風で売れっ子となった今泉監督だが、松本まりかをヒロインに起用した『退屈な日々にさようならを』(2017年)から、作品に深みが増すようになった。本作は福島出身の今泉監督が福島ロケを交えて撮り上げたオリジナル脚本作で、直接的ではないものの大震災がモチーフとなった内容だった。今泉監督が描く誰かへの想いは、生きた人だけに限らず、亡くなった人にも向けられている。想い続けることで、亡くなった人も生きている人たちの記憶の中で生き続けることができる。

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(c)2020『あの頃。』製作委員会

 アイドルオタクたちのバカバカしい青春を描いた『あの頃。』だが、物語後半は今泉監督ならではの独自の境地へと踏み込んでいく。現実世界をあくせくしながら生きる者と、若くしてこの世に別れを告げる者とが最後までフラットな関係で結ばれる。余命宣告をネタにして、お互いに全力で笑い合う。人生の最期の瞬間まで、「今が人生でいちばん楽しい」と思えれば、それはどんなに幸せなことだろうか。

 誰かを想うことで、生きることが楽しくなる。アイドルの笑顔がアイドルオタクたちの生きる喜びとなり、彼らの声援によってアイドルの笑顔はますます輝きを増していく。アイドルとアイドルオタクとの幸せな関係が、『あの頃。』には描かれている。

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(文=長野辰次)

<ライタープロフィール>
フリーランスライター。映画や映像作品を中心に取材&執筆し、雑誌「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿している。主な著書に『パンドラ映画館』『バックステージヒーローズ』など。

<作品データ>
『あの頃。』
原作/劔樹人 脚本/冨永昌敬 監督/今泉力哉
出演/松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ、大下ヒロト、木口健太、中田青渚、片山友希、山﨑夢人(BEYOOOOONDS)、西田尚美
配給/ファントム・フィルム 2月19日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー 
https://phantom-film.com/anokoro

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