土屋太鳳が凶悪事件を招く映画『哀愁しんでれら』! 優等生キャラを逆手に取った驚愕サスペンス

長野辰次
土屋太鳳が凶悪事件を招く映画『哀愁しんでれら』! 優等生キャラを逆手に取った驚愕サスペンスの画像1(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会

 清純派女優で、いつも明るくて仕事態度もマジメで、スタッフや取材記者からの評判も良く、しかも家族想い…、土屋太鳳にはそんな“優等生”イメージがある。ひとりの女性としては非常にプラスとなる評価なのだが、さまざまな役に挑む俳優としては、固定化された印象はネックにもなりかねない。だが、土屋太鳳が田中圭と共演した映画『哀愁しんでれら』は、そんな彼女のパブリックイメージを逆手に取った、大どんでん返しサスペンスとなっている。

 主人公は児童相談所に勤める福浦小春(土屋太鳳)。幼い頃、母親が家を出ていったことがトラウマとなっており、愛に飢えた子どもたちを守りたいという気持ちで熱心に働いている。母親はいないが、自転車店を営む父親(石橋凌)、大学受験を控えた妹(山田杏奈)、温厚な祖父(ティーチャ)との4人暮らし。経済的な余裕はないが、慎ましい幸せを小春は噛み締めていた。

 ある日、不幸がドミノ倒しのように小春のもとに押し寄せてくる。祖父が風呂場で倒れてしまい、慌てて病院へ運ぼうとした父親は飲酒運転で警察沙汰に。留守宅は火の不始末で火事になってしまう。自転車店は再開不能。小春ひとりで、生活費に加え、祖父の入院代、妹の進学費用まで捻出しなくてはならない。途方に暮れる小春だった。

土屋太鳳が凶悪事件を招く映画『哀愁しんでれら』! 優等生キャラを逆手に取った驚愕サスペンスの画像2(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会

 そんなときに出逢ったのが、大悟(田中圭)だ。酔っぱらって踏み切りで寝込んでいた大悟を外へと連れ出す小春。間一髪、小春のお陰で命拾いした大悟は、日を改めてお礼がしたいと告げる。大悟はエリート開業医だった。お金に困っていた小春に、大悟は笑顔で救いの手を差し伸べる。人生のどん底状態にいた小春には、大悟が白馬に乗った王子さまに思えた。

 大悟の紹介してくれた一流病院で、祖父は快適な入院生活を送る。父親は高収入の仕事に就けた。妹の受験勉強は、一流大学を卒業している大悟が丁寧にレクチャー。一家全員で、小春と大悟の交際に賛成する。もちろん、大悟からのプロポーズを小春は断れない。大悟には先妻との間に生まれた小学生の娘・ヒカリ(COCO)がいたが、小春にすっかり懐いている。豪邸での新婚生活がスタート。まさに小春はシンデレラストーリーのヒロインだった。小春の夢のような日々が、ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(16年)を思わせるカラフルな色づかいで描かれる。

土屋太鳳が凶悪事件を招く映画『哀愁しんでれら』! 優等生キャラを逆手に取った驚愕サスペンスの画像3(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会

 当然だが、シンデレラは優しい王子さまのもとで愛に満ちた幸せな生涯を送りました、ではこの物語は終わらない。子どもの頃に母親に去られたことが忘れられない小春は、血の繋がらないヒカリを全力で愛そうとする。手縫いの筆入れをプレゼントし、小学校に持っていくお弁当も毎日せっせと欠かさずに用意する。いいお母さんになりたい。そんな思いで小春はいっぱいだった。

 だが、女の子は心がうつろいがち。結婚前はあんなに仲良しだったヒカリが、一緒に暮らし始めるとわがまま放題になる。大悟によると、甘える対象ができたために起きる一時的な「幼児退行」らしい。しかし、ヒカリの言動は度を越えていき、小学校でもトラブルを起こしてしまう。

 何があっても、我が子は絶対に守る。自分自身にそう誓っていた小春は、やがて小学校の校医でもある大悟と共に社会を震撼させる大事件を招くことに……。

土屋太鳳が凶悪事件を招く映画『哀愁しんでれら』! 優等生キャラを逆手に取った驚愕サスペンスの画像4(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会

 本作を撮ったのは、『3月のライオン』(17年)、『ビブリア古書堂の事件手帖』(18年)、『麻雀放浪記2020』(19年)などの脚本を手掛けた新鋭・渡部亮平監督。今回のオリジナル脚本で、2016年の「TSUTAYA CREATOR’S PROGRAM FILM」のグランプリを受賞し、商業監督デビューを果たした。

「覚悟がないまま、取り組む物語ではない」。そんな理由から、土屋は本作の主演オファーを3度断っている。製作陣は「今まで演じてきた可愛いらしい役ではなく、自分自身を見失うような役に身を投じる彼女が見たい」と粘り強く交渉。4度目のオファーの際に「この物語は生まれたがっているんじゃないか」と土屋は感じ、出演をOKしたそうだ。共演が信頼できる俳優・田中圭だったことも大きかったに違いない。

 ひとり娘のヒカリを愛するあまり、小春はモンスターペアレントになっていく。誰よりもマジメで、愛情深かった女性がモンスターへと変身してしまう恐怖が、物語のクライマックスに待っている。土屋が最後に見せる冷たい笑顔は、おそらく彼女が初めて見せる表情だろう。

 愛は必ずしも人を救うとは限らない。愛するがゆえに、人は苦しみ、傷つけもする。多くの人に愛される人気者であり、また人気の分だけ叩かれる対象にもなる土屋太鳳は、愛の重みをとても身近に感じているのではないだろうか。そんな彼女が演じる小春は、誰よりも美しく、そしてとてつもなく恐ろしい。

(文=長野辰次)

『哀愁しんでれら』
監督・脚本/渡部亮平
出演/土屋太鳳、田中圭、COCO、山田杏奈、ティーチャ、安藤輪子、金澤美穂、中村靖日、正名僕蔵、銀粉蝶、石橋凌
配給/クロックワークス 2月5日より新宿バルト9ほか全国ロードショー中
(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会
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