多才すぎる女優・池田エライザが映画監督デビュー! 不透明な時代を生きる若者の幸福論『夏、至るころ』

長野辰次

多才すぎる女優・池田エライザが映画監督デビュー! 不透明な時代を生きる若者の幸福論『夏、至るころ』の画像4(c)2020「夏、至るころ」製作委員会

 池田エライザ監督はオンライン試写会の際に、こんなコメントを語っている。

「夢を抱くことさえ難しくなった今の世の中ですが、ささやかな日常生活の中にこそ幸せがあると私は思うし、そこにはいろんなヒントがあると信じています。どうか温かい目で見守ってください」

 翔の日常生活は、優しい両親(杉野希妃、安部賢一)たちに恵まれ、とても穏やかに過ぎていく。若い頃は退屈に感じられていた平凡な日常が、大人になって振り返ると掛け替えのない大切な日々だったことに気づく。「二本煙突」の迷信にも同じことが言える。当たり前だと思っていた風景も、見る角度を変えることでまったくの別物に変わってしまう。

 幸せとは、お金を払って手に入れるものではない。その人本人が「幸せ」に気づく能力がないと、一生を費やしても手に入らないものだ。撮影時23歳だった池田エライザ監督は、言葉にすることなく、ごく普通の高校生の物語を通して「幸せ」の在り方をさらりと描いてみせている。

多才すぎる女優・池田エライザが映画監督デビュー! 不透明な時代を生きる若者の幸福論『夏、至るころ』の画像5(c)2020「夏、至るころ」製作委員会

 福岡県出身のリリー・フランキーが翔のおじいちゃんを演じており、彼が「ミドリ」と名付けているインコは、モーリス・メーテルリンクの童話『青い鳥』に出てくる幸せの青い鳥を彷彿させる。『青い鳥』のチルチルとミチルは、飼い主に幸せをもたらす青い鳥を探し、さまざまな異世界を旅することになる。旅を終え、自宅にようやく帰り着いたチルチルとミチルは、自宅で飼っていた小鳥が探していた青い鳥であることに気づく。幸せの青い鳥は、見る人によって違った色に見えるプリズムのような存在だった。

 チルチルとミチルは旅を経験することで、初めて「幸せ」の価値に気づいた。映画の中のチルチルとミチルである新人俳優・倉悠貴と石内呂依、そして池田エライザ監督がこれからどんな旅に向かうのかとても楽しみだ。

(文=長野辰次)

『夏、至るころ』
原案・監督/池田エライザ 脚本/下田悠子
出演/倉悠貴、石内呂依、さいとうなり、安部賢一、杉野希妃、後藤成貴、大塚まさじ、高良健吾、リリー・フランキー、原日出子
配給/キネマ旬報DD、映画24区 12月4日(金)より渋谷ホワイト シネクイント、福岡ユナイテッド・シネマキャナルシティ13ほか全国順次公開
※12月4日(金)は渋谷ホワイト シネクイントにて、5日(土)~6日(日)はユナイテッド・シネマキャナルシティ13ほか福岡での、池田エライザ監督らによる舞台あいさつを予定
(c)2020「夏、至るころ」製作委員会
http://www.natsu-itarukoro.jp

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