ロケ現場の熱気に警察が駆けつける騒ぎに! 観る人の心を解放する『脳天パラダイス』

長野辰次
ロケ現場の熱気に警察が駆けつける騒ぎに! 観る人の心を解放する『脳天パラダイス』の画像1(c)2020 Continental Circus Pictures

 一本の映画を観たことで、人生観が大きく変わることもある。山本政志監督はそんな映画を生み出すことができる才人だ。山本監督のブレイク作『ロビンソンの庭』(1987年)は、都内のある廃墟で暮らし始めた女性が、日々の疲れを癒し、やがて大自然と一体化していく不思議な物語だった。映画を観る前と観た後では、それまでの世界観、宇宙観はずいぶん異なることになる。『ロビンソンの庭』はロングランヒットし、ミニシアターブームの火付け役となった。

 その後も山本監督は、史上空前の町内運動会を描いたコメディ『アトランタ・ブギ』(1996年)、盗聴マニアを主人公にした『聴かれた女』(2007年)、新興宗教に救いを求める現代人の姿を浮き彫りにした『水の声を聞く』(2014年)など、ユニークな劇場公開作を手掛けてきた。ワークショップスタイルで制作された、大根仁監督のヒット作『恋の渦』(2013年)のプロデューサーとしても知られている。

 唯一無二の作品を生み出す山本監督が、6年ぶりに撮り上げた新作映画が『脳天パラダイス』だ。南果歩、マルチクリエイターのいとうせいこう、柄本明らが出演している本作は、タイトルからも分かるように観た人の脳内に、パァ~とお花畑が咲き乱れるトリップ感満載のお祭りムービーとなっている。

ロケ現場の熱気に警察が駆けつける騒ぎに! 観る人の心を解放する『脳天パラダイス』の画像2(c)2020 Continental Circus Pictures

 ストーリーは極めてシンプル。東京郊外の大きな屋敷で暮らしていた修次(いとうせいこう)たち一家は先代までの財産を食い潰し、借金返済のために屋敷を出ていくことに。末っ子のあかね(小川未祐)がヤケクソ気味に「パーティーしましょう」と地図つきのTwitterを投稿したことから、男をつくって家を出ていった母親の昭子(南果歩)、あかねの友人たち、さらには見も知らぬ旅行客や外国人たちがワラワラと集まってくる。

 誰が呼んだのか、屋敷の庭には屋台まで立ち並び、縁日状態に。近所で大麻を栽培していた大麻愛好家が提供したマリファナが焚かれ、パーティーに集まった人たちはみ~んな気持ちよくなってしまう。前代未聞の大どんちゃん騒ぎ。コメディ、ミュージカル、エロス、怪獣映画……、さまざまな娯楽要素がごった煮状態で繰り広げられていく。

ロケ現場の熱気に警察が駆けつける騒ぎに! 観る人の心を解放する『脳天パラダイス』の画像3(c)2020 Continental Circus Pictures

 ホームレスふうのじじいに柄本明、引きこもりの長男・ゆうたに『止められるか、俺たちを』(2018年)など単館系の話題作に出演している田本清嵐、山本作品の常連となっている村上淳や古田新太といった実力派キャストが出演。南果歩がここまで明るい表情を見せるのは久々ではないだろうか。

 その一方、末娘のあかねを演じた小川未祐やパーティーに集まるおかしな人たちは、オーディション参加者や山本監督が声をかけた演技キャリアのない人たちが多い。プロもアマも関係なく、大騒ぎの中で渾然一体化していく様子が心地よい。観ているこちらも、ストーリーの細かい辻褄など気にならなくなってしまう。

 前代未聞の大どんちゃん騒ぎも夜明けとともに終わりを迎え、修次たち一家は余計な雑念を洗い流し、新しい生活に向き合うことになる。中盤までのデタラメさが嘘のように、思いのほか後味のよいエンディングが待っている。

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