安達奈緒子の脚本の良さに驚く『きのう何食べた?』オリジナル部分も原作上回るハマり具合
編集部
■ケンジの中学生姿
今回、ケンジの実家の家庭事情も明かされた。
家族を困らせていた酒乱の父親は女を作り家を出て行き長らく別居しており、今は生活保護を受けているという。一応夫婦である母親の元に「生活保護を受けずに家族で扶養できないか?」と問う「扶養照会」が毎年送られてくる。それを今年からケンジが記載することになったという非常にリアルな話から、ケンジの昔の姿が回想された。
回想内で、金をせびりに帰ってきた父親の前に現れたのは父より背の高くなった学生服姿のケンジ。
背は高くても中身は「ふんわり乙女」だったとのことだが、そんなことを知らない父親はそれ以来実家に襲来してくることはなくなり、年に一度生活保護の書類が届くことが、父親の唯一の生存の確認になっているとのこと。
未だ母親が正式に離婚していないことに関してケンジは
「白黒つけられない夫婦って案外いるよ」と当たり前のように呟いた。
普段明るいケンジにももちろん、いろいろある。原作人気の一つはこうした表面的でないリアリティではないだろうか。
今回は非常に多くの原作エピソードをまとめた回だった。
ケンジが過去の浮気を告白したのは#41、親父の回想エピソードは#34、エコバッグは#42で富永からもらってるし、玲子が店で働き出すのは#52、休日クレープは#24。
原作と比べれば比べるほど、安達のエピソードチョイスの良さと再構成の上手さに驚く。
それどころか、今回で言えば店長妻が浮気に気づいてたことをさりげなくケンジに伝えた恐怖のくだりや、三谷まみのポスターをもらったのがバレるくだりなど、ドラマオリジナル部分が違和感ないどころか、原作を上回るほどのハマり具合なのも凄い。
番組はあと2回。確実にやってくるであろう何食べロスの時、原作と細かく見比べてさらに楽しみたい。
(文=柿田太郎)
(文=柿田太郎)