令和開始と共に正月を迎えた『きのう何食べた?』サッポロ一番で年越ししたくなるケンジ飯

柿田太郎

■「サッポロ一番」がトレンドに

 今回、ドラマで最も注目を集めたのが「サッポロ一番」。

 年末、味噌派か塩派かでケンジの勤める美容室スタッフ一同が盛り上がっており、その後一人で年を越すことになったケンジが大みそかに我慢できずに作って食べていたのだ。

 ちなみに店員は味噌派と塩派で拮抗。だが店長が代々醤油派だと明かすと全員で「ないないないない(笑)」と小馬鹿に。たしかにチャルメラなどに流れるため、サッポロ一番での醤油派は少数派かもしれないが、パロディではなくはっきりと正式な商品名を挙げての放送でこの扱いは新鮮。だが、おかげで塩か味噌を無性に食べたくなったので「2(宣伝)対1(ディスり)」でサンヨー食品的にはプラスなのかもしれない。というか当たり前だが相当プラスだろう。

『きのう何食べた?』で検索すると、すぐ「サッポロ一番」と出てくるほどだから、相当売り上げに貢献してるはず。

 公式ツイッターによると、ドラマでやはり実名登場したハーゲンダッツから大量のアイスが製作に届けられたようなので、やはりメーカーとしては無料で大々的な広告をしてくれるようなものなのでありがたいのだろう。

 ちなみにケンジはバリバリの味噌派で、シロさんが実家に帰って一人きりで過ごす大みそか、大好きなジャニーズっぽいアイドル(原作ではジャニーズと明言してるがドラマでは正式なクレジットはなし)のカウントダウンライブを見ながら着信を無視するほどほど熱中して作り、食べていた。

 ケンジの料理シーンは原作でもかなり貴重で、その様子はまさに一人飯漫画風味。具材に白菜・もやし・にんじん・長ネギ・わかめ・豚肉・卵が具として入り、ニンニクやバターまで入った禁断の豪華版。

 のちに着信を無視していたことをシロさんに咎められた際も「サッポロ一番じゃ仕方ねーな」「作ったら即食べだよなアレは」と許されてしまうほど特別な存在のよう。どんなインスタントラーメンでも「作ったら即食べ」だとは思うのが、そんな上げ足は取るまい。

 大みそかに一人でも寂しくないのは、シロさんがちゃんと帰ってきてくれるとわかってるからだとか、ジャニーズ風味男子アイドルみたいな若い子と付き合いたいと思わなくなった(シロさんがいるから)とか、大切な人が当たり前にいるからこその実感をケンジがしみじみ感じているのがよかった。

 

■ケンジが再度激怒したその理由は?

 一方のシロさんは、雨樋のゴミをとったり、父親にスマホの使い方を教えてあげたりしつつ、実家ライフをしみじみ味わう。ハタから見ていても、なんだかんだ言いつつシロさんと親との関係はとても良好、だからこそ愚痴を聞かされ、つい言葉がキツくなってしまったケンジの気持ちもよくわかる。

 久しぶりに戻ってきたシロさんが驚いたのは、両親が隣の家の幼子をかわいがる姿。隣の家の子もシロさんの両親になつき、シロさん家の間取りを熟知してるなど普段から親密に交友してることがわかる。

「孫の代わりにお隣の子どもたちをかわいがることに決めたんだ……」

 ゲイであるがゆえに孫を見たいであろう両親の気持ちに応えられないシロさんが感じる罪悪感。それと同時にマイノリティである寂しさも感じていたように見えた。

 その夜、隣の家が餅をついて作った切り餅を冷凍庫からあふれるくらい持たされたシロさん。三が日は、うれしそうに餅をさまざまなバリエーションで楽しんで食べていたケンジだが、4日目の朝にリミッターが爆発する。

「パン食べさせて……餅以外の炭水化物が食べたーい! 餅以外ならなんでもいいの!」

 餅しか食べさせてもらえずに死んだら、おそらくこうなるであろう餅ゾンビ。

 元来洋風好きのケンジだけに、まずパンが食べたくなるというのもうなづける。

 そこでシロさんが作ったのが、トーストにバターを塗り、同じく実家から持参した母親特製の栗きんとんを塗った栗きんトーンスト(命名・筆者)。小倉マーガリンが美味いのだからこれも美味いに決まっている。最後のまとめ方も綺麗に決まって構成も見事。

 ドキドキさせられ、ハッとさせられ、食欲を刺激され、笑わされる。

 性別だの少数派だのがどうでもよくなり、何気ない日常が楽しくなる、週末にぴったりのドラマだ。次回も期待します。
(文=柿田太郎)

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