■碇シンジのように自問するシロさん
慌てるシロさんとパニック状態の富永。はたから見てると喜劇だが、当事者のシロさんにとっては「通報でもされたら弁護士の資格剥奪かもしれない」という、とんでもない悲劇。
「どうしたら? どうしたら? どうしたら?」
碇シンジのように自問するシロさんが慌て出した答えは「私はゲイです」とのカミングアウト。ちょっと松田聖子の時のガブリエルを思い出したが、パニック真っ最中の富永には効果なし。続けて職業が弁護士である旨を伝えると富永は、とたんに冷静さを取り戻す。
したくもないカミングアウトをしてしまったシロさん渾身の「こっちだったかあ~……」に爆笑。2択を外したからという以前に、そもそもシロさんはカミングアウトしたくない派なのに……という悔しさ。
しかも戻ってきた娘や夫に、立て続けに「この人ゲイなんだって」と広められてしまう地獄。「ゲイだから(浮気じゃないから)大丈夫」という、いいのか悪いのかわからない説得力と偏見が入り混じる部屋で、そのままご飯を頂く。
根掘り葉掘り聞かれ大変そうなシロさんだが、パートナーであるケンジは別として、ゲイと知った上で、ややクセはあるものの比較的フラットに接してくる富永の存在はシロさんにとって特別なの存在なのかも。
こうして富永とシロさんは出会ったのだが、これを聞いてケンジは安心するどころか、シロさんが結果的にカミングアウトしてたことをとても嬉しそうにしていた。
■細部までこだわった作り
これ以外にも、スイカの購入を悩んでいる時に中村屋の店内BGMの疑獄ループ「なーんなんなんなかなかなかむらや~」が漏れ聞こえてくるのとか、富永の部屋でまだ騒ぎになる前、戸棚の上に大きな蒸し器があるのを見つけて、どこか嬉しそうなシロさんとか、富永に教わった具だくさんそうめんを作る時、浮気を気にしてケンジが食べなかったプレーンオムレツを刻んで具として使っていたりとか、その時の箸置きがスイカ型だったりとか、原作(♯2)にない絶妙な付け足し加減が見事。