【ドラマレビュー】

西島秀俊と内野聖陽に、萌えて泣かされる『きのう何食べた?』どこまでアドリブなの?

柿田太郎

■内野の芝居に泣かされる

 カムアウトしているケンジと、余計な波風を立てたくないため隠しておきたいシロさんとのスタンスの違いも描かれる。

 ケンジが美容室のお客(千石さん=MEGUMI)にイケメンの彼氏がいるということを話していたため、偶然街で出くわしたそのおしゃべりなお客に「例の彼氏さん?」と尋ねられてしまうシロさんとケンジ。

 シロさんは部屋に帰りカーテンをしっかり閉めてから心置き無く激怒する。

 そして、言い返すかと思いきやケンジは神妙に言う。

「ごめん……。でも、でも、うちの店の店長はお客さんに奥さんや子どもの話をするよ。なんで俺だけ自分と一緒に住んでる人の話を、誰にもしちゃいけないの……?」

 むせび泣くケンジに、何も言えないシロさん。原作ではあっさりした印象のシーンなのだが、ドラマでは内野の熱演でグッとつかまれるシーンに。これぞドラマ化の醍醐味というやつを味わわせていただき、まんまと泣かされてしまった。ずるい。

 ひとつ屋根の下、価値観の違う者同士が些細なことで揉めながらも、お互いの根本を認め合う様子が気持ちよく、同性同士であることや性別などを超えて響くものがあった。

 ちなみにケンジの店の店長はマキタスポーツが演じており、こちらはこちらでいいのだが、原作の店長の見た目はどう見てもレキシの池田貴史。このキャスティングも見てみたかった。

 

■どこまでがアドリブなのか?

 仲直りした2人がハーゲンダッツを食べる。気の緩みが体型維持などの「破綻を招く」というシロさんにケンジが言う。

「人生の喜びってのは綻び(ほころび)から生まれたりするものなんだよ?」

 アイスを舐めながら、さりげなく真理を説きやがる泣き虫なキリギリス・ケンジ。いちゃいちゃしてるオジさんたちや美味しそうな料理やアイスを食欲全開でのほほんと愛でていたら、急にハッとする言葉を放り込まれる。テレ東深夜ドラマでたまにある瞬間だが、今回もやられた感が。

 さらにこの後もアドリブらしき掛け合いになり、シロさんが困りながら笑ってしまうというシーンでエンディング。

 心から「ごちそうさま」と思った視聴者も多いはず。

 シロさんとケンジのからみには、どこまでが台本がわからない自然なノリも多く見られ、太るからとシロさんにおかわりを禁じられたケンジが、シロさんの目を盗んでおかずを奪おうとして2人でキャッキャする、ある種お宝映像のようなくだりも、後半はかなりアドリブっぽかった。西島の不意打ちをくらったような笑い方が実に自然で実にズルい。

 そして笑ってしまった西島をさらに困らせよう内野がスイッチを入れ、畳み掛け出す瞬間、タチとネコがふわっと入れ替わる感覚が面白い。これが萌えるという感情なのだろうか。

 今回は原作の♯1と♯3、♯11を合わせた脚本で、全体に笑いを散りばめつつ、山場で泣かせ、さらに佐藤仁美演じるやっかいな顧客が次の物語の種を蒔き、次回につなげた。今期、見逃せないドラマになりそうです。

 放送後、シロさんの父親役で出演していた志賀廣太郎が、体調不良のため番組を降板すると発表があった。原作では大事な役で出てくる回もあるので残念だが、回復をお祈りしたい。
(文=柿田太郎)

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