ギョーカイ的ドラマレビュー その19

ムロツヨシと戸田恵梨香の愛に涙するラブストーリー?『大恋愛』最終回レビュー

編集部

 ついに最終回を迎えた『大恋愛〜僕を忘れる君と』。「涙なしでは見られなかった」とネット上でも大反響のそのストーリーと、全編を通しての感想を振り返ってみたい。

 2019年12月、いなくなった間宮尚(戸田恵梨香)のことを、「宇宙人にさらわれた」と息子・恵一に説明している間宮真司(ムロツヨシ)のシーンから、さかのぼって、2019年4月、尚がいなくなった直後のシーンへと移る。

 皆が手を尽くして探しても、尚は見つからない。そんな日々のなか、井原侑市(松岡昌宏)と北澤薫(草刈民代)の結婚を、ついに侑市の母・井原千賀子(夏樹陽子)も認めたり、真司は、真司のことも忘れてしまったが、なんだか幸せそうな松尾公平(小池徹平)と出くわしたりする。

 そんなある日、尚が見つかったという知らせが届く。尚は、真司の本に出て来るのと似た煙突のある町の小さな診療所で住み込みで働いていた。真司は、尚の荷物の中にあったビデオカメラに残されていたメッセージを見て、涙する。

 真司は、浜辺で、真司のことを忘れている尚に話しかけ、ふたりをモデルにした小説『脳みそとアップルパイ』を声に出して読み始める。子供や、かつての仲間たち、母親の薫にも合わせるが、尚の記憶が戻ることはない。その尚に、真司は、自らが夫だと名乗ることはしないまま、小説の朗読を続ける。続篇「もう一度 第一章から」の終盤に差し掛かったとき、その奇跡は起こった。続く文章を自分から言い、「真司。続きを聞かせて」と言う尚に真司がハッとして震える声で朗読を続けると、尚は微笑んで「やっぱり真司は才能あるね。すごい」と、束の間記憶を取り戻したのだ。尚を抱きしめる真司。だが、尚の記憶が戻ったのはその一瞬だけで、尚はその1年後、肺炎で旅立ってしまったのだった。

 尚の記憶が残った一瞬、筆者も思わず涙ぐんでしまった。『大恋愛』というドラマの全編を振り返ってみると、最初は女医と引っ越し屋のアルバイトとして出会ったふたりが、やがては若年性アルツハイマーの患者と作家と、立場は変わりながらも、お互いを愛し合い、思いやる気持は決して変わることなく、最後まで純愛を貫いた王道のラブストーリーだった。

 一方、これを若年性アルツハイマーの物語として見てみた時に、実際はこの病気になりながらも工夫して仕事を続けたり、家庭生活を長年送っている人がいるにも関わらず、このドラマでは仕事はわりとあっさり辞めてしまうし、病気が進んだら迷惑をかけたくないと自ら家を出て、最後は肺炎で亡くなったことがあっさりナレーションで説明されてしまう。このドラマだけを見ると、若年性アルツハイマーというのはやはり希望のない病気だと思ってしまうのではないか? 印象としては、ラブストーリーとして泣かせるために、この病気を都合良く利用した感じは否めない。あくまで対象としたのは一般視聴者であり、病気の当事者はあまり視聴者として想定していないのであろう。

 そのあたり、最後のテロップで、「このドラマは医療監修を受けて制作されたフィクションです」と言い訳しているのだろうが、ラブストーリーで難病をテーマにすることの、難しさや限界についても、考えさせられるところの残るドラマではあった。まあ、そんなことはあまり気にならなくなってしまうくらい、真司と尚が愛し合う姿がキラキラ輝いていた、いいドラマでもあったのである。

里中高志
月刊誌などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

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