北川昌弘の「美女&美少女的ドラマ独偏批評」その31

『大恋愛』『リーガルV』が作品賞、戸田恵梨香、米倉涼子が女優賞? 2018秋ドラマ中間チェック

編集部
ドラマの“質”は脚本家で決まるのか、あるいは演出家、プロデューサーで決まるのか? 確かにそれもあるだろう。だが、作品に彩りを添えるのは女性キャストだ! 稀代の美女&美少女ウォッチャー・北川昌弘が送る、女性キャストから見るドラマ評――。

 視聴率的には、鉄板の『相棒』と米倉涼子の新作『リーガルV』が予想通り強いが…。

 恐るべし米倉涼子。高視聴率をゲットし続ける『ドクターX』を見送って、あえて新シリーズにチャレンジだったが、なんの問題もない感じ。林遣都が頑張っているし、勝村政信が『ドクターX』から変わらずいい感じ。今度は『リーガルV』がシリーズ化だろうか。そうなると安達祐実が結構ハード? 『リーガルV』に『警視庁・捜査一課長』、さらにはテレビ東京の『警視庁ゼロ係』もあるし…、事件物には安達祐実が定着しつつある。

 安定の『相棒』と『科捜研の女』は省略。

 期待したほど数字が取れてないのが、『下町ロケット』と『獣になれない私たち』。

●『下町ロケット』(TBS系日曜21時~)

 同名ヒットドラマの続編なのだが、なんかいきなり出演者多いなあという印象。中村梅雀の平気で依頼人を裏切る弁護士とか。尾上菊之助の助けてくれた人を掌返しで裏切る経営者とか。見ていて気分が悪い。最初から悪役ですという池畑慎之介はともかく、高橋努が演じている新キャラも挑発担当のようだ。フィクションとは言え…。それらに立ち向かっていく爽快感の前に見るのが辛い気分が先立つ感じ。

『半沢直樹』も敵失や幸運でなんとかなった話を、キメ台詞と堺直人の演技でごまかしていると批判したことはあったけど。前の『下町ロケット』や『陸王』は感動や爽快感がかなり上回っていただけに。土屋太鳳演じる娘が帝国重工でそれなりの立場になっているのが救いなのだが、そこも危うくなっていきそうで心配。

●『獣になれない私たち』(日テレ系水曜22時~)

 野木亜紀子脚本作品。最初はなんのドラマかよくわからない感じだったが、恋愛関係は 黒木華(破局同居)、田中圭(交際中)、新垣結衣(友人)、松田龍平(破局?)、菊地凛子(別の人と結婚を発表)、それぞれのキャストがそれなりに大変な状況がかなり緻密に描かれていて…。今は、さすが、勢いのある脚本家・野木亜紀子が書いているだけのことはあると楽しみです。

 日本映画界の若き至宝と思っている黒木華が、田中圭演じる元恋人の家に居座って引きこもるというとんでもないキャラを演じているのも衝撃だったが、注目です。

 国際派女優で染谷将太と結婚し、出産を経て復帰してきた菊地凛子もさすがの存在感。新垣結衣のダメな同僚役の伊藤沙莉も相変わらずいい味出してるし。私は楽しめてます。ただ、失敗しないハズの新垣結衣で数字が取れないのは日テレ的には痛いか。その前も、石原さとみの『高嶺の花』で数字が取れなかったし。

 そして、現状でおすすめの3作品。

●『ブラック・スキャンダル』(YTV・日テレ系木曜23時59分~)

 山口紗弥加主演で、芸能界を舞台にした復讐劇。今年、一気にブレイクした松本まりかが復讐のため整形して山口紗弥加になり、自分がスキャンダルで嵌められた謎を解明して復讐していく。松井玲奈が唯一の友人というポジションだったが…。悪徳チーフマネージャー役で平岩紙が健闘。新人女優役の小川紗良が収穫。

●『ハラスメントゲーム』(テレビ東京系月曜22時~)

 井上由美子原作脚本作品。大手スーパーのコンプライアンス室が軸で、室長の唐沢寿明とその部下の広瀬アリスのコンビがなかなかうらやましい関係。一時は、広瀬すずの姉的存在だった広瀬アリスが『釣りバカ日誌』のヒロイン、『探偵が早すぎる』でここでは社長の滝藤賢一とW主演と順調にきていて、ここでもいい感じで何よりです。いろいろなハラスメントの勉強にもなります。

●『大恋愛~僕を忘れる君と~』(TBS系金曜22時~)

 大石静脚本。医者役の戸田恵梨香と売れてなかった小説家のムロツヨシの格差恋愛ドラマ。それだけでも十分に楽しめそうだったのだが…。その戸田恵梨香が若年性アルツハイマーになり、その権威が元婚約者の松岡昌宏とは。一度は身を引いたムロツヨシだったが、その関係を題材にした小説もヒットし、松岡昌宏のはからいもあって復縁した。その権威の力を持ってしても、症状の進行は止められないということになりそう?

若手女優的に注目の2作品は…

●『中学聖日記』(TBS系火曜22時~)

 有村架純主演ドラマ。まともな婚約者がいる美人教師がなぜ中学生と恋しちゃうのかがよくわからない。注目の新人のハズだった、彼に恋している小野莉奈も損な役回りだし。吉田羊と中山咲月の関係も中途半端だったし。しかも第6話から3年後になり、タイトルもどこにいっちゃったのか状態。中学生たちが、中学生に見えない問題は、その3年後を描くためということかと納得はできたが。結果的には有村架純が地雷を踏んだ印象だったが、3年後、小学校の教師をしていることが彼の母親にバレて、また酷いことが起こるのだろうか? 別れた婚約者とも、中学生だった彼とも再会して、新たな恋の混乱が始まりそう…。

●『今日から俺は!!』(日テレ系日曜22時30分~)

 福田雄一脚本・演出作品。概ね想定通り。清野菜名がヒロインで、橋本環奈、乃木坂46をまもなく卒業の若月佑美が共演という魅力的キャストで、それなりに楽しめるのだが、基本的には昭和のヤンキーの喧嘩ドラマなので女子の比重があまり高くないのが惜しい。第4話は若月佑美がフューチャーされて、なぜ、あんな男が彼氏(戸塚純貴)なのかはともかく、とてもよかったです。

そのほかの主なドラマも一応、触れておこう。

●『SUITS』(フジテレビ系月曜21時=)

 アメリカのドラマのリメイクとのことだが、主演の織田裕二向きの話をよくみつけてきたものだ。秘書役の中村アン、パラーガル役の新木優子、妹分役の今田美桜と、出番はボチボチだが美人女優もきれいに配置されている。事務所の所長が鈴木保奈美なのも『東京ラブストーリー』以来、27年ぶりの共演という話題作り効果は充分。若手の相棒役の中島裕翔が弁護士資格を持っていなかったり、替え玉受験屋だったという設定は、舞台が日本だとちょっと無理がある気もするが…。

●『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系火曜21時~)

 ちょっと風変わりな動物学者を高橋一生が演じる癒やされ系ドラマでよかった気もするが…。子供の教育問題が題材になってきて、画一教育と才能を伸ばす教育の問題に。頑張っている厳しい母親役に松本若菜が出演。歯科医師役で榮倉奈々が恋愛要素で絡んでくるのはどうかと思ったが、風変わりな動物学者に触れてどう影響を受けるか、視聴者の代表なのかもしれない、歯科衛生士役でトリンドル玲奈も出演。大学の学生役で『バイプレイヤーズ』で大活躍だった期待の若手女優・北香那が真面目なメガネ女子役。旧芸名:未来穂香の矢作穂香がイマドキJD役で出演。彼女たちももっと活かして欲しいところ。

●『黄昏流星群』(フジテレビ系木曜22時~)

 今のテレビは中高年が視聴の中心だから、中高年の恋愛ドラマというのは安易な気がする。少なくても黒木瞳と佐々木蔵之介の恋の行方に興味はない。石川恋と高田純次には興味があるし、高田純次がうらやましい。中山美穂と藤井流星も気にはなるけど。黒木瞳は関して言えば、『駐在刑事』では寺島進の敵役的キャリアの新任署長は適役だと思うが。恋愛ドラマのヒロイン役は、流石に? ということです。第1話のいきなりマッターホルンもフジテレビらしいバブル感にしか思えなかった。第3話あたりで、夫が出向したことを知らずに、銀行にきた中山美穂に、本仮屋ユイカが「知らなかったんですか」みたいな配慮にかけた言葉をぶつけたのはショックだった。

●『昭和元禄落語心中』(NHKG金曜22時~)

 岡田将生と山崎育三郎(第6話で死亡)が落語を題材に大健闘。かくれた作品賞候補。
第5話、第6話で成海璃子の少女時代を演じた庄野凛がこれまた抜群にうまかった。

●『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日系金曜23時15分〜)

 相葉雅紀主演の獣医物ということで、ほんわか癒し系のドラマかと思ったら、なかなかシビアな題材が。シングルマザーの看護師に広末涼子。芸者役で、趣里と渚(尼子インター)が出演。思ったほど癒やされません。

●『忘却のサチコ』(テレビ東京系金曜24時12分~)

 高畑充希主演でスペシャルドラマから連ドラ化。近年高く評価している『東京センチメンタル』と同じパターン。結婚式で花婿に逃げられた主人公。出版社の編集なところは『重版出来!!』を思い出し、食事シーンは『孤独なグルメ』の女版。これができてしまう高畑充希の問題なのかもだが。『過保護のカホコ』も『忘却のサチコ』もキャラが強烈過ぎて…。『東京センチメンタル』の吉田鋼太郎にタメ口のアルバイトの関係とか、NTTドコモのCMの加藤一二三会長と社員の関係みたいなものを見たいのだが。

●『あなたには渡さない』(テレビ朝日系土曜23時15分~)

 木村佳乃と水野美紀のバチバチ感。その間にはさまる萩原聖人…他人事としては面白いかも。木村佳乃と萩原聖人の娘役で全日本国民的美少女コンテストグランプリの井本彩花が連ドラ初レギュラー。どう機能するか、注目したい。

●『ドロ刑』(日本テレビ系土曜22時〜)

 新米刑事の中島健人は“デカワンコ”なみに鼻は利くらしく、遠藤憲一演じる伝説の泥棒を特定。コンビを組んで事件を解決していく。私好みの江口のりこが刑事役で出演。ホリプロで次にブレイクするのではと楽しみな美人女優・石橋杏奈も刑事役。Sキャラ感が板につきそうな田中道子は科捜研の女。そして13係の係長は稲森いずみ。ちょっと普通の警察ドラマよりは見づらい感じもするが、慣れれば大丈夫か。

●『結婚相手は抽選で』(東海テレビ・フジテレビ系土曜23時40分~)

 こんな話を題材にしたい気持ちがわかるほど少子化問題は深刻ではあるが…。野村周平が演じている主人公をどのくらいの人が見たいのか? 高梨臨、佐津川愛美、山谷花純が出てます。強制的に結婚させるより、結婚して子供を作り育てる方が、独身でいるよりわかりやすく得だという仕組みを税金や年金制度で作ることが大事なハズだと思います。現状、子育ては、時間もお金もかかる上に、責任も発生してやってられないわけだから。

 あと、朝ドラについても一言

●『まんぷく』(NHKG月~土8時~他)

 安藤サクラという、今、もっとも力のある女優を主演におさえた作品。子役時代がなくて、子役マニアには残念な出だし。早々に内田有紀は死んじゃうし。橋本マナミが出だしをささえ、松井玲奈も出ていたが…。

 戦争が終わって、松下奈緒の長女が疎開から帰ってきたら岸井ゆきのになってた。ただ、松下奈緒の娘ですから、まだ10代前半くらいの設定のハズ。大河ドラマ『江』の上野樹里の登場シーンなみに、ある意味、思い切った起用だが、逆にここからずっと出てくれそうでありがたいかも。片岡愛之助や桐谷健太がなかなかの悪役ぶりなのはどうなのかとも思うが、女優には美人であることより大事なことがあるということがよくわかる作品。

 全体的に、年齢差のあるW主演構造が安定した視聴率を取る方法ではないか? とにかく今のテレビ視聴率は元々のテレビ世代である中高齢者が支えている。若者は人口比的にも少ない上にテレビを見る習慣も少ない。ただし、長い目で見て、若者を無視するわけにもいかないので、二世代ダブル主演構造のドラマが大事にになってくるわけだ。

『スーツ』の織田裕二と中島裕翔
『ハラスメントゲーム』の唐沢寿明と広瀬アリス
『リーガルV』の米倉涼子と林遣都
『ドロ刑』の遠藤憲一と中島健人

 まあまあ機能していると思います。

 という状況で現段階の作品賞、主演女優賞、助演女優賞候補は…

★作品賞候補
『リーガルV』に『ブラック・スキャンダル』『大恋愛』『ハラスメントゲーム』が破綻なく、どこまで迫れるかかな。大穴は『昭和元禄落語心中』

★主演女優賞候補
米倉涼子『リーガルV』
戸田恵梨香『大恋愛』
山口紗弥加『ブラック・スキャンダル』
広瀬アリス『ハラスメントゲーム』
高畑充希『忘却のサチコ』

★助演女優賞候補
黒木華『獣になれない私たち』
伊藤沙莉『獣になれない私たち』
イモトアヤコ『下町ロケット』
平岩紙『ブラックスキャンダラ』
石川恋『黄昏流星群』

北川昌弘(きたがわ・まさひろ)
1957年、北海道生まれ。成蹊大学卒業。美女&美少女ウォッチャー。執筆活動やメディアへ出演する一方、各地の芸能イベントでの取材活動を行い、アイドルランキング『T.P.ランキング』の資料収集に従事。1991年〜1992年オーディション番組『ゴールド・ラッシュ!』(フジ)の審査員。1996年〜『ザテレビジョン』ドラマアカデミー賞審査員。

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