ギョーカイ的ドラマレビュー その15

 愛する人のためを思って身を引く──。恋愛ものではよくあるパターンだが、実際にそんなことってあるだろうか? その方が愛する人が幸せになれるから、というのが表向きの理由だが、結局それで相手は幸せにならないし、そもそも身を引いたのにはほかの理由があったのでは……そんなことを思わせる『大恋愛』第5回。

 前回、間宮真司(ムロツヨシ)が、北澤尚(戸田恵梨香)に「別れよう」と言った、その続きからスタート。「支えていく自身がないよ。無理なんだ」と言う真司。この間は、「尚がアルツハイマーでも心臓病でも腎臓病でも水虫でも一緒にいたいんだ」と言っていたのに。

 フラフラと実家に帰るも何も説明しない尚を見て、尚の母の北澤薫(草刈民代)は、真司のアパートに行き、「あなたの覚悟はその程度だったんですか。もう金輪際うちの娘にかかわらないでください」と告げる。

 尚のいる家に帰りたくない真司は、アルバイトの先輩である木村明男(富澤たけし)に営業所に泊まりたいという。この木村が、いつも妙に真司に理解が深く、なにげに深いことを言うのである。尚が真司を探して営業所にやってくると、木村は尚に、「優しくて面白い。男はそれだけじゃいやなんだって」と真司の気持ちを代弁するのである。こんな職場の先輩欲しい〜。

 尚は「最後の一杯を飲もう」と、LINEで真司をいつもの店に呼び出すが、ひとりで飲んで待っても真司は来ない。店長と店員が「妊娠したの?」とかやりとりしているのは、前にもやったアテレコを尚が頭のなかでしているのか? 店を出ると真司が立っていて以前と同じセリフを言うがそれも幻。真司のアパートに行くと、そこはもぬけの殻になっていた。

 時は流れて2014年4月。(ちなみに、これまでは2013年の話だった)。尚は、「好きな小説は? 母親の旧姓は? 間宮真司が拾われた神社は?」と自分に問いかける自分の動画をスマホで見ている。神社の名前がわからなくなっている尚。動画は「これに答えられなくなったらあなたのやることはひとつ。自ら死ぬことです」と言う。そんなの普通の人でも忘れるって!

 生気のない虚ろな表情の尚は、井原侑市(松岡昌宏)との診察では、「間宮さんとは上手くいってます」と嘘をついている。その尚が、母親に買物を頼まれた帰りに本屋に行くと、一冊の本を見つける。『脳みそとアップルパイ 間宮真司』。尚と出会って書き始めた小説が刊行されたのだ。なんと、すでに10万部を突破して、サイン会も開いている。

 小説を購入し、公園で読みふける尚。物語は真司と尚の間にあったことをベースとしているが、ラストは事実に反して、女性の方から主人公の元を去り、彼女は主治医と一緒になることになっていた。

 井原侑市の家でも、井原の母の井原千賀子(夏樹陽子)がなぜか『脳みそとアップルパイ』を購入していて、その本に気付いた侑市に、「売れなくなった小説家と女の人と医者の三角関係の話。医者が嫌なやつなの」と、その医者が自分の息子のことであるとは気付いていないようす。その小説を読んだ侑市は、出版社を通じて真司に連絡を取る。

 尚といつも会っていた居酒屋で向かい合う真司と侑市。小説では医者と一緒になっていたが、実際は尚と一緒になっていないことを告げる。「井原先生の方が彼女を支えてくれると思って身を引いたんです」という真司に、侑市は「私は二度振られた身ですよ。真司さんは私に生きる力を与えてくれるとはっきり言われました」という。そして、尚が表れ「あとはふたりでゆっくり話してください」。侑市が尚を呼んでいたのだ。

 ふたりに飲み物を出す居酒屋の女性店員は、赤ん坊をおぶっている。あれはアテレコではなく本当の声だったのか。再会早々、「結婚しよう」と尚にプロポーズする真司。それから母親への結婚報告。結婚式の急展開。式の会場で、出席者に尚は。自分がMCI、軽度認知障害であることを明かしながら、今、自分はとても幸せであることを告げたのだった。

 作家というのは、事実を自分の都合のいいように変えて小説化するものなので、実際は自分から別れたのに、自分が振られた結果、彼女は主治医と一緒になったことにしてキレイに書いたのだと思っていたら、真司は本当にそう思っていたようである。結局、自分が引っ越し屋のアルバイトであったときは、いかに自分が優しいことや面白いことを言って尚に惚れられていても自分に自身が持てず、自分が20年ぶりにベストセラー作家になったら、自信がついて彼女にプロポーズできたということか。

 なんでも脚本の大石静には、92年に放送された松田聖子主演の『おとなの選択』というドラマがあって、これも冴えないマンガ家の卵だった恋人を振って別のエリートと一緒になったら、そのマンガ家がブレークしてまた現れるという話だそうで、男が成功すると恋愛にどういう影響を及ぼすのかっていうのは、この脚本家にとって大きなテーマのようだ。

 巷で人気のこのドラマも、真司と尚の純愛ばかり強調されているけれど、意外に恋愛における格差やステータスの話でもあるということが、もっと強調されてもいいのではないか。あと、結婚式にあの居酒屋の店長まで呼ばれてたのはビックリです。

里中高志
月刊誌などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

ムロツヨシと戸田恵梨香の格差恋愛に異変が? 脚本の匠か『大恋愛』5話レビューのページです。エンタMEGAは、連載コラムの最新ニュースをいち早くお届けします。芸能ニュースの真相に迫るならエンタMEGAへ!