北川昌弘の「美女&美少女的ドラマ独偏批評」その29

大賞は綾瀬はるかか石原さとみか、それとも……18年夏ドラマ女優総括

編集部
ドラマの“質”は脚本家で決まるのか、あるいは演出家、プロデューサーで決まるのか? 確かにそれもあるだろう。だが、作品に彩りを添えるのは女性キャストだ! 稀代の美女&美少女ウォッチャー・北川昌弘が送る、女性キャストから見るドラマ評――。

 結論から言えば、作品賞は『恋のツキ』、旬女優賞は徳永えりで決まり。作品的にそれに対抗できたのは『dele/ディーリー』くらいでしょうか。やはり菅田将暉クンの存在感は群を抜いている。さらにその彼に対抗できる山田孝之も流石というべきか。ただ、このコーナー的には女性レギュラーは麻生久美子くらいだったので……。

◯『恋のツキ』

 同性三年目の31歳映画館アルバイトの主人公・平ワコが徳永えり。バイト先で出会った若い男性・伊古ユメアキ(神尾楓珠)にときめいてしまう。

 まず、同棲相手やオナニー的なリアルな性描写にびっくりしたのだが、結論として、こんなに映画を愛していることが伝わるドラマも珍しい。そして徳永えりの女優としてのポテンシャルの高さも。少々地味な印象の女優だったが、だからこそこの作品では威力を発揮した。同棲相手がいながら若い男にのめり込むことに感情移入できちゃう。しかもその若い男性は高校生だと判明。思わず、神尾楓珠の生年月日を確認、1999年1月21日生だった。ドラマの中に登場した映画の予告編も思わず見たくなるほどの出来。さらに二人の関係に嫉妬する女子高生役で欅坂46の今泉佑唯まで登場。

 とにかく徳永えりが実力を発揮。リアルな描写と映画愛溢れる内容、傑作でした。

 主演女優対決に関して。視聴率的には『義母と娘のブルース』が最終回19,2%平均14.15%(ビデオリサーチ調べ)で圧勝ではあるが……。

◯綾瀬はるか『義母と娘のブルース』

 まず作品的に、なぜ、綾瀬はるかと竹野内豊が結婚することになったのか。その馴れ初めがよくわからない。愛し合っているふうでもなかったし。義理の娘をなせ一生懸命育てたかは生い立ちの説明で描かれてはいたが。

 個人的にはメガネ女子好きなので、メガネの綾瀬は悪くないのですが、腹芸や土下座も特にみたいわけでもないし。ほぼ無表情で、衣装も髪型も2009年から2018年になっても変化したように見られない。そういうキャラと言ってしまえばそこまでだが、ラストの“東京⇔東京”のチケットを見るとファンタジーだったのか? 高視聴率も含めて……。

◯石原さとみ『高嶺の花』

 綾瀬はるかに比べれば、はるかに奮闘してました。普段の可愛さに、家元代行的なときの凛とした表情もたまらなかったし。キャバ嬢のときも楽しかった。これで低視聴率とは同情を禁じ得ない。世間が高嶺の花というか、華道の家元に特に興味がなかったということだと思う。今やっている『大恋愛』の戸田恵梨香とムロツヨシを見ても美女とイケメンじゃない男の格差恋愛は間違っていないとは思う。

◯波瑠『サバイバルウエディング』

 波瑠は現在の短髪美人女優の代表格。代表作は世間的には連続テレビ小説『あさが来た』だろうが、コチラ的には圧倒的に主演スピンオフドラマも作らてた『BORDER』の比嘉ミカなわけで。そういう意味では『もみ消して冬』の優秀で弟に高圧的な姉はバッチリだった。『未解決の女 警視庁文書捜査官』の鈴木京香に振り回され気味の新米刑事ですらやや不満でした。というわけで、今回の仕事と恋愛に振り回されたり、悩んだり、優柔不断だったりする役がどうかなあと思う。奔放な吉高由里子さんあたりだったり『重版出来!』の時の黒木華さんあたりの方が……。

◯吉岡里帆『健康で文化的な最低限度の生活』

 最初の映画監督から公務員に転身設定はどこへ? 生活保護という題材もタイムリーではあるが、明日は我が身と思いつつ、それを見たいかと言われるとという感じ。ただ『ごめん、愛してる』の二人の間で揺れるヒロイン、『きみが心に棲みついた』の酷い男からの呪縛が解けないヒロインに比べたら、吉岡里帆はとにかく『ゆとりですがなにか』の教育実習生・佐倉悦子、『カルテット』のアルバイト店員・来杉有朱といった、とんでも美女役が鮮烈すぎた。そういう意味で普通の誠実なヒロイン役はいい流れだと思う。

◯松本穂香『この世界の片隅に』

 オーディションからの選出での起用。第二次世界大戦前後という大変な時代が舞台。自身も爆弾で腕を負傷するなど大変な目に遭うが、そこまで深刻に見えないほんわか感。なんかひとりだけキラキラしているのをどう評価するか。もともと連続テレビ小説『ひよっこ』のメガネっ子・青天目澄子役、現在はCM「意識高すぎ!高杉くん」の松本さんでお馴染み。実は『下北沢ダイハード』第6話や『コードネームミラージ』第21話で鮮烈な爪痕を残している。連続YouTube小説「アスアブ鈴木」もなかなかヤバイ。これでまた知名度がアップして、ますます今後が楽しみ。

◯永野芽郁『半分、青い。』

 まあ、半年間、たいへんなドラマに付き合わされた印象ですが。身近で、信頼関係にある人と、結婚する人は別という話? それなりに大人っぽい表情も魅力的だったので、それが見れたのはなにより。映画『俺物語!!』のヒロイン役を見たときに「こりゃいける」と思ったので、NHK連続テレビ小説主演も驚かないです。逆に葵わかなは『瀬戸内海賊物語』の制作発表の時に、短髪でオレのストライクと思ってしまい、まさか連続テレビ小説を主演するとは思わなかったけど。

 あと、特筆しておきたいのが、

◯広瀬アリス『探偵が早すぎる』

 一時期、広瀬すずの美人な姉になりかかったが『釣りバカ日誌』のみち子さん役を好演。連続テレビ小説『わろてんか』のリリコ役でも評価が高まり。そしてこの『探偵が早すぎる』でも、オーバーアクションコメディエンヌヒロインで大健闘でした。若くて美人なのになんでもやれちゃう感抜群。現在『ハラスメントゲーム』にヒロインで出演中だが、相手役が唐沢寿明だけに、予定以上にコメディに見えるのではとやや心配。

◯清原果耶『透明なゆりかご』

 准看護学科に通う高校生。アルバイトで産婦人科の看護助手をすることによって
産婦人病院の現場に直面することに。とにかく、クールビューティー系美少女女優として際立つ存在。連続テレビ小説『あさが来た』に女中・ふゆ役で出演。幕末とは思えぬ際立った存在感でした。さらに『精霊の守り人』では綾瀬はるかが演じた主人公の少女時代役。美少女好きのNHKのお気に入り? 一気に連ドラ主演抜擢という感じ。この秋から大塚製薬オロナミンC、日本生命のCMにも登場。これはますます要注意な存在です。

 というわけで、今期主演女優賞は『恋のツキ』の徳永えりでした。

★助演女優賞

 これはもう『義母と娘のブルール』の横溝菜帆に尽きる印象。綾瀬はるかと互角以上に渡り合っていたし、ボールが当たるシーンや自転車でコケるシーンは演技には見えないほど。ビックリでした。途中で10年後になり、ナレーションを務めていた上白石萌歌にバトンタッチ。コチラ的には菜帆チャンロス状態だったのだが、視聴率的にはここからウナギ昇りの上昇。コチラと世間ではかなりズレがあるのかもしれない。

 大健闘だったのは、

◯足立梨花『限界団地』

 足立梨花が団地妻? と最初聞いたときには驚いたが、実はオタク系女子で『特捜警察ジャンポリス』、MC『志村でナイト!』もレギュラーでバラエティ色も強い。ドラマでは月9『ようこそ、我が家へ』で、有村架純の大学の友人役で鮮烈な存在感を示したこともあったが……。今年は、BSジャパンの『噂の女』で連ドラ主演も果たしたし。とにかく、隣の団地妻役も、佐野史郎との相性もバッチリ。思わぬ収穫というか、今後は女優として楽しみだ。

◯本田翼『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』

 上戸彩が実質的にゲスト的出演でその穴を埋めた印象。とにかくアクションである。やればできるものなのだろうか? 『奥様は取扱い注意』で綾瀬はるかのアクションに触発された? ただ、インパクト的には、有田哲平と共演した『わにとかげきす』の方があったので……。アパートの隣人のスーパーの夜間警備員が好きになる設定に呆然。NGがなくなったのだろうか?

 印象的だったのは、いわゆる敵役を好演した二人。

◯筧美和子『いつかこの雨がやむ日まで』

 堀井新太演じる谷川和也の婚約者・三上沙耶役。経済的優位性を武器に……まっ、彼女の立場から見れば、大事な婚約者に変な虫がついてはたまらない。突然現れた幼馴染がヤバいと思えば、全力で排除しようとするのも当然かもしれないが。いやあもう、こんな人が恋人だったら大変だと思わせたところが見事。

◯奈緒『サバイバルウエディング』

 連続テレビ小説『半分、青い。』で幼馴染4人組のひとり菜生役でもある。『サバイバルウエディング』では吉沢亮演じる祐一を巡って、波瑠が演じるさやかと張り合う。抜け目ないとても優秀な女子役で波瑠さんがかなりピンチで、見事でした。吉沢亮もこちらでは超爽やか男子だったが『GIVER』では復讐者として主演だし。

 スタート時から注目していた美少女

◯高橋ひかる『高嶺の花』

 お葬式の時にコスプレはよかったし、ぷーさんに女心を解説する機能をよく果たしている時もよかったが、毎回、コスプレが本格的過ぎて、顔もわかりにくいくらい。よほど、自転車店の店番のバイト代がいいのだろうか。

◯岡田結実『ヒモメン』

 好奇心旺盛の新人ナース役はちゃんと機能していたと思うが。もっと、出番をということだろうか。

◯久保田紗友『この世界の片隅に』

 クールビューティー系美少女の一角。松本穂香のしっかり者の妹役だったが、出番が4話くらいで、もうちょっと出番が欲しかった。

 というわけで助演女優賞は、『義母と娘のブルース』の横溝菜帆。次点は『限界団地』の足立梨花でした。

 若手女子がわんさか出演した作品に関して…

◯『チア☆ダン』

 主演の土屋太鳳をはじめ、キャスティングは素晴らしかった。ただ、ドラマの内容はかなり甘い印象。ラストで全国優勝できなかったのはともかく、新入生が入らない部活って? コーチやコスチュームはどう工面していたかも不明。さらに時間経過が微妙だったり。石井杏奈、佐久間由衣、山本舞香などは確かに頑張っていた。大友花恋や志田彩良は今後も女優として楽しみだし。小倉優香も特技が活かせて何より。朝比奈彩、箭内夢菜、足立佳奈、福地桃子も幅広く活躍してもらいたい。クールビューティー系の一角、八木莉可子が思いのほか高身長に見えて、今後、相手役を選びそうだったのも印象的。

◯『マジムリ学園』

 次世代のAKB48グループのエースは小栗有以だと表明した作品だと思う。敵役のボス、生徒会長役の本間日向(NGT48)は存在感ありました。総選挙速報の女王・荻野由佳(NGT48)も敵側でそれなりの存在感でした。基本的にはすでにAKB48グループのファンでメンバーに詳しくないと、なかなか見づらかったかなと思います。

北川昌弘(きたがわ・まさひろ)
1957年、北海道生まれ。成蹊大学卒業。美女&美少女ウォッチャー。執筆活動やメディアへ出演する一方、各地の芸能イベントでの取材活動を行い、アイドルランキング『T.P.ランキング』の資料収集に従事。1991年〜1992年オーディション番組『ゴールド・ラッシュ!』(フジ)の審査員。1996年〜『ザテレビジョン』ドラマアカデミー賞審査員。

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