北川昌弘の「美女&美少女的ドラマ独偏批評」その26

石原さとみが綾瀬はるかに視聴率で負けた理由は恋愛モノの行き詰まり? 『高嶺の花』最終回

編集部
ドラマの“質”は脚本家で決まるのか、あるいは演出家、プロデューサーで決まるのか? 確かにそれもあるだろう。だが、作品に彩りを添えるのは女性キャストだ! 稀代の美女&美少女ウォッチャー・北川昌弘が送る、女性キャストから見るドラマ評――。

 ぷーさん(峯田和伸)は千秋(香里奈)のハニートラップに陥落せず。

風間「これ、ドッキリですよね。オレなんかそんなもてるハズがない」
風間「好きな人、彼氏、旦那さんに、裏切られたら、自分がぶっ壊れてしまう。そういう女性がいい」

 もも(石原さとみ)はそれをケータイのスピーカーで聞いている

もも「わたし…」

 つまり、今のあなた(千秋)より、出会った時のももがいい。

風間「お蕎麦屋さんの分厚い湯呑と薄くて脆いティーカップ。どちらが割れにくいと思いますか?」
もも「分厚い湯呑でしょ」
千秋「分厚い湯呑?」
風間「高値の高級なティーカップはそれでも割れません。大切にされるから。オレが大切にするからです」

 もも、泣きながら「ありがとう」

 なな(芳根京子)は家元(小日向文世)と母親・ルリ子(戸田菜穂)のところへ。家元にならないとの覚書を渡す。

家元「わかった、本日、ただいまをもって月島を破門する」

 慌てるルリ子に比べて、想定していたような家元の対応。

 佳代子(笛木優子)の店で、商店街のみんながそろっているところで、千秋は、ももの親友で医者であり、ぷーさんにハニートラップを仕掛けたと正体を明かす。ななはもものところへ転がろこむ。

なな「やっぱり、お姉ちゃんを家元にしたいのよ。血がつながってない? だったらなに」

 家元と宇都宮(千葉雄大)が密会。

家元「これでよかったのだ。いずれももが実子でないことは、どこかから、だれかから漏れてしまうだろう。その時、ななが神輿として担がれ、必ず、お家騒動が起こる」
家元「ななの中に才能を見出したいという想いは多少なりともあっただろうか」
宇都宮「ななさんも才能はあります」
家元「しかし、天分がない」
家元「天才たちの人生を賭けた戯れなのだよ、芸術は」
家元「ももとの婚姻をすすめてよいな」
宇都宮「はっ?」
家元「本来のももなら、兵馬様にも優る天分を持つ」
家元「兵馬様をもひれ伏させる、ももの天才を、その目で見たいとは思わんかね」
宇都宮「兵馬がひれ伏す」

 家元の宇都宮に対する見事な殺し文句が決まって、もう一波乱…ある? そして、ももが正式な次期家元に決まる。さらにななの前から宇都宮が消えた? ももとの結婚の準備かと思ったが…。

 ももが、ぷーさんにお弁当を届けて次期家元になることを伝える。

もも「ありがとうございました」

 ぷーさんも多少ジタバタするが、終了宣言される。ぷーさんの家で、商店街の仲間がそろっている中、もものお弁当を食べるが壊れ気味。そこから、なんと高嶺の花をつみに行くことに。

 ももが次期家元お披露目の準備。金(正司照枝)、銀(正司花江)から、自分の母親の話をきく。母親は家元と結婚して、家元のために生花をやめた。素晴らしい華道家だったが、「これは月島の華道ではない」と嫌ったため。その母親の華道の真髄は“わたしはお花”?

 そして佳代子の店では、ぷーさんが高嶺の花を取りに行くのに、男たちが一緒に出かけたことを伝えられ、ついにコスプレ娘(高橋ひかる)の母親のクールビューティー(奥田恵梨華)がセリフを一言「そう」。やっと佳代子の旦那のタクシー運転手(袴田吉彦)の面目躍如ではあるが、よく高嶺の花の位置が正確にわかるものだ。引きこもり少年をGPSで追跡していた? しかも、あれから何日、まだ花は咲いているようだ。

風間「オレは英雄になる!」

 ももの家に届けられた、高嶺の花の一輪挿し。

もも「いつかあなた言ってたね“好きな人がいる方が勇気がわく”て。“そんなのおママゴト”。あの時、そう言ったわ。でもわかった、その想いを真っ直ぐに極限まで昇華すればいい」
なな「ねえちゃん」
もも「迷わないで」
なな「迷わないで」
もも「私ならできる。違う?」
なな「あなたならできる。お姉ちゃんは絶対だ」
もも「私はお花」
もも&なな「私たちはお花」

 ももの新流派立ち上げの俎上が急遽行われる。そして家元・月島市松も含め、全流派が認める。宇都宮の居場所をつきとめたなな。馬の牧場で働いているようだが、どうやってつきとめた?

 足を引きずるぷーさんをスーパーカーで送る千秋。花で飾られた自転車店。ももがいる。

もも「今日からこっちのももちゃんだけよ」

 家元とルリ子。

ルリ子「愛があるのなら、私はもうひとり、産んでみせます」
家元「なんと」

 そして自転車少年(舘秀々輝)が商店街に帰ってきてみんなに迎えられる。公園でいけばな教室を始めるもも。

 ももはぷーさんと、ななは宇都宮と結ばれる形の結末。まっ、前回での想定内のハッピーエンドではあった。家元が言い出した、ももと宇都宮の結婚話もまったく膨らまなかったし。高嶺の花にそんな威力があるとは。自転車少年の功績大ではあった。

 高嶺の花にぷーさんが本気で取りに行ったことが、高嶺の花のももに伝わったということなのだが。

 気になることは、あの結末で月島流は大丈夫なのか? ルリ子さんがこれからもうひとり産んだとしても、子供が成長するまで20年以上かかるわけで、家元は手の自由がきかなくなっている状況では厳しい。

 ももの母親と運転手さんの関係も実は先代の家元が今の家元を覚醒させるためのハニートラップ的なものだったらより納得ではあるのだが、見たかったのは、ももの婚約者・吉池(三浦貴大)へのハニートラップがどんなだったのか。

 吉池とももの関係は良好だったのに、たとえ、真由美(西原亜希)が本気で好きになったとしても攻略は難しそうなのだが。

 個人的には、いつもコロッケを揚げているコスプレ娘の母親のクールビューティー奥田恵梨華さんにセリフがあってよかった。旦那さんとの会話はなかったけど。

 コスプレ娘の高橋ひかるに関してはコスプレが本格的すぎた印象。女子の気持ちをぷーさんに伝えるような役割はうまく機能していたが。あの衣装代は自転車店の店番のアルバイト代で出ているいるのだろうか。

 佳代子の娘(田畑志真)もなかなか可愛いのだが、最終話でも思ったが、制服姿の時にあまり威力を発揮しない…珍しいタイプ。

 なな役の芳根京子も流石は朝ドラのヒロインも務めた若手女優のホープ。家元に決まった時は、石原さとみに負けない凛とした表情だったし、不安げな時の表情のギャップは流石だった。石原さとみも次期家元とキャバ嬢とこっちのももの時、それぞれ流石に魅力的。問題はなかったと思う。

 で、最後に石原さとみ『高嶺の花』はなぜ綾瀬はるか『義母と娘のブルース』に視聴率的に破れたか? 現代の若者が恋愛に興味がなくなったというか、恋愛する余裕がなくなったと言われて久しく。さらにケータイの普及で、すれ違いが起きにくくなったという物理的要因も加わり、かつてのトレンディドラマのような恋愛ドラマが行き詰まる中、『電車男』のような格差恋愛に一縷の望みは確かにある。

 でも、今は草食男子とコスプレ娘のようなオタク女子の恋愛の方がいいのかも。問題は華道の家元? 特殊すぎる高嶺の花だったので、女子は感情移入しにくい。

 話もその次期家元問題と、その芸術的能力を覚醒するために、かなり特別なことをしなければいけない設定が、一般庶民のネックになった印象。

 ぷーさんがイケメンじゃないのも男の側では感情移入できる。イケメン好きには千葉雄大くんが露出度高めでがんばっていたし。

 一方の『義母と娘のブルース』の方は根本的によくわからないことを最後まで解決しないという反則勝ち? 一応、最終回では、生い立ちから、自分に重ね合わせて、エゴで育てたと、みゆき(上白石萌歌)を育てた理由は説明されはしたが。

 2009年から現代になっても、綾瀬はるかは、髪型、服装から、多分、メガネも変化なし。ラストシーンの東京⇔東京のチケットに至っては、実はファンタジー? 夢オチみないな印象。

 メガネの表情のあまり変わらない綾瀬はるかは好みではあるが、一般にも受けたのはビックリ。一流企業の営業部長だったのも大胆な設定。しかも、最終回では施設出身で高卒だったことも判明したし。やっぱりリアリティ無視? なぜ、ライバル会社の社員と恋愛関係でもなさそうなのに結婚したのか。

 宮本(竹野内豊)が派手に後妻になる人を探していて、それに亜希子(綾瀬はるか)さんが乗っかった? 最後までよくわからなかった気がする。

 それを子役(横溝菜穂)の演技でごまかされてしまった印象。その子役が上白石萌歌になってから、急激に視聴率が上昇したのも凄かった。確かに、子役の演技を上白石萌歌がうまく引き継いでいて見事だったが。前半の佐藤健もよくわからない出方が続いていたし。

 とにかくなんとも摩訶不思議なドラマだった。これがOKなら、それはそれで、ドラマ界にとってかなり画期的なことではある。

北川昌弘(きたがわ・まさひろ)
1957年、北海道生まれ。成蹊大学卒業。美女&美少女ウォッチャー。執筆活動やメディアへ出演する一方、各地の芸能イベントでの取材活動を行い、アイドルランキング『T.P.ランキング』の資料収集に従事。1991年〜1992年オーディション番組『ゴールド・ラッシュ!』(フジ)の審査員。1996年〜『ザテレビジョン』ドラマアカデミー賞審査員。

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