ギョーカイ的ドラマレビュー その9

吉岡里帆『健康で文化的な最低限度の生活』ついに佳境! 親子の絆について問いかける第9回レビュー

編集部

「健康で文化的な最低限度の生活」もいよいよ大詰め。今回の第9話を入れて、残すところあと2話となった。

 今回は、「親子における貧困の連鎖」にどう立ち向かうかということがひとつのテーマになっていたように思う。

 義経えみる(吉岡里帆)が担当していた、祖母とふたり暮らしをしている子供、丸山ハルカ(永岡心花)の家に、失踪していた母親・梓(松本まりか)が4年ぶりに帰ってきた。「これからは私自信の手でハルカを育てていきたい」と言うとともに、「私も生活保護受けられますよね」と、えみるに尋ねる。

 梓からの申請を受け付け、調査の結果、梓も生活保護を受けられることになったのが、これがよくわからない。生活保護とは世帯単位で受けるものではなかったのか? これでは、同じ世帯の中で、祖母と母親それぞれが個人で生活保護を受給することになったように思えるのだが、それはおかしいのではないか? 今回は原作にないエピソードだけに、そのあたりのツメが甘くなった可能性もある。ちゃんとわかるように説明してほしい。

 さて、その梓だが、生活保護受給が決まったとたん、「母は認知症が進んでお金の管理ができなくなっているので、生活保護の振り込み口座を私の口座に変えてほしい」と言いだし、えみるは不審感を抱く。

 一方、えみるが第1回で担当し、その後生活保護を卒業して、えみるの行きつけの食堂で働いている阿久沢(遠藤憲一)。久しぶりに再会した娘・麻里(阿部純子)と暮らしていたが、麻里はキャバクラでの勤務中に倒れてしまう。病院に行くと妊娠していることがわかるが、お腹の子供の父親とはすでに別れていると言う。

 戸惑う阿久沢を、えみるは勇気づけるが、半田明伸(井浦新)は、「私は生まないという選択肢もあると思います。生まれたらそれで終わりではない。親には責任がありますから」と言う。いつも生活保護利用者の立場に沿ったことを言う半田らしからぬ発言に、えみるは戸惑う。役所に帰って、そのことを係長の京極大輝(田中圭)に告げると、田中は、かつて半田が担当した利用者が、半田に勇気づけられて子供を産んだものの、その後児童虐待で逮捕されたことがあった、と教える。

 ここで昔の半田が出てくるのだが、いまと髪型が違っていて、その髪型がなんだか90年代風を表現しているようで、妙におかしい。昔江口洋介がこんな髪型をしていたような……。

 そのころハルカは、また母親が帰ってこなくなってしまい、食べるものもなくなって、夜に区役所にえみるを訪ねに来る。あとでそのことを知ったえみるは、夜遅くなっているにもかかわらずハルカの家を訪れ、母親がもう一週間も帰ってこないことを知って驚く。ハルカを児童相談所に保護したえみるは、連絡がつかない母親と話し合うため、生活保護を振り込みではなく窓口渡しに変更することを提案する。後日、区役所を訪れたのは、「お金入ってませんけどー!」とわめきちらすハルカの母・梓とその彼氏らしき男──。ケースワーカーとして成長したえみるはどう立ち向かうのか。そして、阿久沢と娘・麻里の決断は?

 今回、阿久沢の娘・麻里も借金を抱えていたことがわかったが、その遠因は、父親である阿久沢が借金を抱えていたことにあった。ハルカの家の生活困窮も、世代間で受け継がれたものである。世代間の貧困の連鎖を断ち切るには、子供を産まない、という選択をするしかないのか──。この重いテーマについての結末は、次回最終回に持ち越されることになった。

 ところで、えみるたちは何故いつも河原を自転車で走っているのだろう。南区役所で担当しているケースは、みんな河原の先に住んでいるのだろうか? そんなどうでもいいことを考えながら、次回を心待ちにすることにしたい。

里中高志(さとなか・たかし)
「サイゾー」「新潮45」などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

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