ギョーカイ的ドラマレビュー その8

「健康で文化的な最低限度の生活」第8回。このドラマ、視聴率が悪いわりには、ネットの記事でよく取りあげられているような気がするのは気のせいだろうか? 「デイリー新潮」では、このドラマの視聴率が悪いのは、不正受給、暴力団の関与、生活保護ビジネスなど、生活保護のより深刻な問題を取りあげないからだ、なんて記事が出ていた。たしかに生活保護にはもっとダークな部分がたくさんあるのだろうが、そういった部分を取りあげていたら視聴率は今よりもよかったのだろうか? このドラマは、生活保護受給者のことを悪者にはしない、というスタンスで作られているように思われる。ドラマとしてはそれはやはり正しかったように思うのだが、それが数字に結びついていないのは寂しい限りである。

 さて、いつの間にかドラマの舞台は2019年になり、義経えみる(吉岡里帆)はケースワーカーとして2年目を迎えている。今回のテーマはアルコール依存。えみるが担当する赤嶺岳人(音尾琢真)は、急性膵炎になり、病院に運び込まれるが、自身がアルコール依存症であることを認めようとしない。これはアルコール依存症患者によくあることで、この病気は「否認の病」であるとも言われるように、本人は自分は病気ではない。酒をやめようと思えばいつでもやめられると思っている。しかし、本人が認めないうちに、確実に一日たりとも酒を飲まずにいられない状態になっているだけでなく、アルコールによって身体がむしばまれているのである。

 えみるは赤嶺をアルコール依存症専門病院に入院させるが、赤嶺は「義経さんい言われて仕方なく来ただけで」と不満をぶつける。悩むえみるをプリンをきっかけに会議室に呼び出すのは、いつも生活保護受給者に対して、投げやりな発言ばかりしている石橋五郎(内場勝典)。その石橋がいつもと違った様子で話しだしたのは、かつて担当したアルコール依存症患者に死なれてしまったという出来事。「それ以降私は利用者に感情移入をするのをやめました。そうしたほうが自分の心が保てるんです」と言いながら、「でも義経さんにはできるんちゃいますか。そんな人にも健康で文化的な最低限度の生活を保証し、救ってあげることが」と、自分が断念してしまった思いをえみるに託すようなことを言うのだった。

 赤嶺が退院すると、えみるは同僚と一緒に赤嶺の酒ビンで散らかった部屋を片付ける。もう一度きちんと仕事をして、もうずっと会っていない娘に会いたいと、心に決めた赤嶺を、えみるは自助グループに連れていく。

 アルコール依存症患者はほどほどに飲むということができないため、完全にお酒をやめるしかない。しかし、お酒への欲求は簡単に消えることはない。さらに、アルコール依存症には完治はなく、「今日も飲まなかった」という事実を毎日積み重ねていくしかない、などとも言われる。そのために大きな意味を持ってくるのが、同じアルコール依存症患者が集まる自助グループだ。

 しかし、赤嶺は働きたい気持ちばかりが強く、自助グループに通うことには、なかなか意味を見出せない。そう心に決めた赤嶺が選んだバイト先は、よりにもよって居酒屋。心配するえみるをよそに最初は張り切るが、客の残した酒をみるたびに心は揺れ動き、ストレスもたまった赤嶺は、自助グループにも出なくなり、失踪してしまう。

 大家に鍵を開けてもらってえみるが部屋に入ると、そこには酒ビンが転がっていた。ようやく川でビールを飲みながら釣りをしている赤嶺をえみるが発見し、追いかけると赤嶺は逃げ出す。「どうせ義経さんもオレのことクズだと思ってるでしょ。オレには酒以外何もない。家族も誰もいない。生きていたって……」そう叫ぶ赤嶺の手を義経は握り、「私は赤嶺さんのこと信じてましたよ。それは私が赤嶺さんに生きてほしいと思っているからです。まだまだこれからですよ」と告げる。そのえみるの真心に触れた赤嶺は、もう一度やり直すことを決め、自助グループにも再び通いだすのだった。

 だんだんケースワーカーとして根性が定まってきた様子のえみる。すっきりと問題が解決、とはいかないところが、ケースワーカーという仕事ではあるが、そんななかでも、利用者とまっすぐに向き合うというえみるの持ち味が、結果を結びつつあるようだ。来週は、えみるが担当してきた丸山一家の母親をめぐって一波乱あるらしいが、どのような「えみるらしさ」を見せてくれるだろうか。

里中高志(さとなか・たかし)
「サイゾー」「新潮45」などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

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