ギョーカイ的ドラマレビュー その3

安達祐実の登場で起死回生なるか!? 生活保護世帯の高校生が夢を見る『健康で文化的な最低限度の生活』第3回レビュー

編集部

 ケースワーカーの義経えみる(吉岡里帆)から、申告せずにアルバイトしていたお金を返還しなければならないことを告げられた、生活保護受給世帯の高校生、日下部欣也。前回の終盤、やり場のない怒りから欣也がギターをたたき壊した、その続きから始まった第3回。役所に戻ったえみるは、上司の京極大輝(田中圭)から、「共感しすぎて利用者の感情に巻き込まれるな」と注意される。

 しかし、この第3回を通してみると、まさに日下部家に感情移入し、巻き込まれっぱなしのえみるだった。また、今回は原作にないエピソードもかなり含まれ、ドラマ独自色の強い構成となっていた。

 たとえば、第1回でえみるが担当した受給者、阿久沢(遠藤憲一)と、日下部欣也が夜のコンビニで鉢合わせ。同じおにぎりを取ろうとしたことをきっかけに、コンビニ前でおにぎりを食べながら、束の間の会話をする。阿久沢が「ジャニス・ジョプリンというミュージシャンは、4ドル50セントを握りしめて死んでいたんですよ」と言うと、日下部は「握りしめてたんじゃなくて、遺体の横に4ドル50セントがあっただけですよ」と訂正する。

 60年代のミュージシャンにも詳しい、古風な日下部欣也少年ゆえに、携帯電話も持っていないのだろうか。家出した彼に会いたいえみるは、自転車をこいで、ボーリング場やバッティングセンターを探しまわる。しかも、京極が「実家に転がってたから」と、彼のために提供してくれた、中古のギターを背負って。

 ひとり100ケースも担当しているというのに、こんなに1ケースに入れこんでいたら、とても身が持たないと思うのだが、そこがドラマなりの見せ方だろう。このドラマの宿命というか、課題というか、現実そのままにやれば重苦しくて見ていられないだろうし、かといって軽いトーンにするとリアリティがなくなって感じられてくる。どうやら軽めのシーンを多く入れ込む方向でいくらしいが、視聴率が第2回で、平均5.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と苦戦しているのを見ると、そのあたりがうまくいっているのか不安になる。

 結局、最後は日下部家のシングルマザー、聡美と欣也がふたりで役所を訪れ、不正受給となった60万円を少しずつ返していくことで話がついた。半田明伸(井浦新)は、母子に生活保護の意義について説明するとともに、免許の取得や資格取得、大学進学にあたってなど、高校生を支援する仕組みもあることを説明した。無事ギターも渡せ、これからも自分のやり方で利用者を応援することを決意するえみる。一時は音楽をやめると言っていた欣也も、これからもバイトも続け、収入申告もしながら、音楽という夢も追い続けることを母親に告げた。

 ちなみに、生活保護受給世帯の高校生に関しては、つい最近まで卒業後大学に進学せず働くことが前提とされていた。しかし2018年6月に成立した改正生活保護法の大学進学支援の制度が盛り込まれ、大学進学時に新生活の準備として最大30万円が支給される給付金制度が始まることとなった。せっかくなので、半田にはこの辺りの最新事情もはっきりと解説してほしかった。

 今回のラストでは、別れた妻子に手紙を書こうとしていた阿久沢のもとに、娘から、妻が亡くなったことを知らせる手紙が届いた。また、次回は生活保護を受給しているシングルマザー役として、安達祐実が登場するようだ。まるで大学サークルのようなノリの生活課の新人同期たちのやり取りなど、ツッコミどころも多いこのドラマ、視聴率挽回はなるのだろうか? 

里中高志(さとなか・たかし)
「サイゾー」「新潮45」などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

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