テレビの裏側をコッソリ暴露! 謎の業界人集団「チーム・スパイス」の業界裏日誌

【連載29】テレビで放送されてこそ芸能人! ケガをも隠す芸人魂とは?

編集部
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「大丈夫です! 出ていません。出ていませんからっ!!」

  若手お笑い芸人のTは、必死に自分の頭を手で押さえながら、心配する出演者やスタッフに語気を強めてそう言った。

  とあるバラエティ番組の収録でのことである。
  この日は、お笑い芸人が目隠しをして、モノを手で触ったり、舌でナメたりしながら、それが何かを当てるというゲームが行われていた。
  目隠しをしている回答者以外の芸人たちが、たくさん並んでいるモノの中から1つを選んで出題するというルールである。

  こういう企画の場合、ある程度は流れが決まっていて、最初はフライパンやおたまといった日常生活で使うモノ、要はさほどインパクトのないモノからスタート。
  徐々に、熱々のおでんやサボテン、ザリガニ、ヘビ、おじいちゃんの入れ歯などエスカレートしていく。

  芸人は、例えそれが何であるかを途中で理解したとしても、大げさなリアクションを取りながら、笑いを誘い続けなければならない。
  まさに、腕の見せ所である。

  さて、何人かがチャレンジし、場がだいぶ温まってきたところで、Tの出番となった。
 
  Tは大手芸能事務所の所属で、芸歴3年という若手芸人。
  今回先輩芸人のUのバーター(=抱き合わせ)で番組にキャスティングされた。
  テレビ初出演ということもあり、本番前からかなり気合が入っていたが、やはりどこか頼りなさげに見える。

  目隠しをしたTに、芸人一同が何を当てさせるかを相談している中、先輩芸人のUがスタッフに脚立を用意するように小声で指示を出した。
  Uは脚立に上がると、「いいか、頭に落とすから、それで何か当ててみろよ」と、やや無茶なことを言う。

  だが、理不尽にも思えるこの提案が、じつは後輩を気遣ってのことだということは、MCも他の芸人たちも分かっている。
  テレビ初出演でガチガチに緊張しているTが少しでも笑いを取れるように、Uは落とすモノや、その落とし方でフォローしようとしているのだ。

  テレビ番組に出るからには、何かしら“爪跡”を残さなければならない。
  しかし、若手ともなると、大概は何もできずに収録が終わってしまうということがほとんどである。
   同じ群れに生きる先輩として、後輩を助けてやろうするのは、至極当たり前のことなのだ。

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