テレビの裏側をコッソリ暴露! 謎の業界人集団「チーム・スパイス」の業界裏日誌
【連載8】テレビ局はリアクション芸人を殺す気か!? 規制の波であの“リアクション芸”がテレビ業界から消滅の危機!
編集部
怒声の主はお笑い芸人のAで、ADが用意した“ゴムひも”へのダメ出しだ。 この日は、番組内のミニコーナーで勝負に負けた芸人が罰ゲームとして“ゴムパッチン”を受けることになっていた。 “ゴムパッチン”をご存知だろうか? コンビの一方が太いゴムひもを口にくわえ、もう一方が先端を目一杯引っ張り、手を放して、相手の顔面に直撃させるという、お笑いコンビ「ゆーとぴあ」が一世を風靡した芸である。
知らなかった人は、これから“ヨロシクね!”(byゆーとぴあ)。 とまあ、バラエティー番組では、今やおなじみのリアクション芸の一つだ。 プロレスにエンターテインメントの要素が多分に含まれていることが、周知になって久しいが、リアクション芸も同様で「痛い」、「熱い」。「辛い」ということをただストレートに伝えるだけでは、バラエティー番組として成立しない。
それでは、視聴者がドン引きするだけだ。 プロレスラーが相手の技を受けることで、観客をヒート(=熱狂)させるように、リアクション芸人たちもまた、ただ体を張るだけでなく、視聴者をいかに惹きつけ、笑わせるかということを意識している。 そこが、芸人としての腕の見せ所となるわけだ。 例えば、今やリアクション芸人界のレジェントの一角を担う「ダチョウ倶楽部」の“熱々おでん芸”。 傍から見ると、上島竜兵が、熱いおでんをリーダーの肥後克広と寺門ジモンに無理矢理に食べさせられているようにしか見えないが、あれには緻密な計算がある。 まず、おでんを準備している段階で鍋のフタは絶対に開けない。 これは、本番でフタを開けた時、“湯気”がしっかりと立つように配慮されている。
湯気を見ただけで、「熱い」と視聴者に強く感じてもらうためだ。 また、おでんは具材によって温度が違う。 とくに大根はデンジャラスで、だから最初に大根を口には入れない。 温度の高い熱々の具材を、顔の同じ個所に何度も付けていると、ヤケドしてしまう。
こうなると肉体ばかりか、タレント生命も大ヤケドになる。 そのため、適度に具材を変えながら、必ず一度付けた箇所とは違う箇所に具材を付けるという決まりもある。 “適材適温”で使い分けているからこそ、いいリアクションが取れるのだ。 こうした下地があるからこそ、「聞いてないよ~!」という身の危険を感じる緊急事態にはならない。 さて、冒頭の“ゴムひも”に関するお笑い芸人Aの怒りだが、それはもっともなことなのである。 ゴムひもといっても、何でもいいというわけではない。 “ゴムパッチン”のゴムひもは、テレビ画面で見えやすいように、そこそこの「太さ」が必要であると同時に、そこそこの「痛さ」と「派手な音」が表現されるものと相場が決まっているのだ。