ギョーカイ的ドラマレビュー その6

吉岡里帆が“重さ”に耐えられない……ケースワーカーの想像力が問われる『健康で文化的な最低限度の生活』第6回レビュー

編集部

 前回、父親には絶対に連絡を取らないでほしいと言っていたにも関わらず、義経えみる(吉岡里帆)たち東区役所の生活課の職員が父親に援助が可能かどうかを尋ねる扶養照会をしたことで、父親・島岡雷(あずま)が現れたことにショックを受けた島岡光(佐野岳)。第6回は、その島岡が電車に飛び込もうとして取り押さえられたところからスタート。

 そのような状況になっても、「父親に会いたくないくらいで自殺未遂します?」と、いつもアームウォーマー(?)をつけている生活課職員の石橋五郎(内場勝則)が言ったり、どうもこのドラマに登場する人たちは、ケースワーカーなのに想像力が足りないのではないか。それは、扶養照会の紙をビリビリにして返してきた水原典子の息子について、「私、家族の絆って絶対だと思っていた」などと言う、同じく生活課職員の桃浜都(水上京香)にも当てはまる。

 結局、えみるとその上司の京極大輝(田中圭)が真実を知らされるのは、島岡光が入院した精神科病棟の医師からであった。光は、幼少期から父親から性的な虐待を受けていたのだ。

 光が自殺未遂したのは、父親との過去に気づくことができず、扶養照会をしてしまったせいだと自分を責めるえみる。京極に「重いんです。重くて重くて身動きが取れません。私は何の力にもなれないし、これ以上人を傷つけるのが怖いんです」とつぶやく。

 そんなえみるを元気づけるのは、先輩ケースワーカー・半田明伸(井浦新)。光の父親に扶養照会することもこの半田だけが最初から反対していたし、どうもこの半田が唯一この生活課でまともなケースワーカーのような気がしなくもない。その半田はえみるに対し、「義経さんは利用者の伴走者になれる力を持ってる人なんじゃないですかね」と言うのだった。

 その島岡光の父親は、病院で面会制限がかかっている息子・光に会うために、京極の名刺を使って区役所の京極と名乗ることで、病棟に入り込む。あわや息子の病室に入ろうとする父親を駆けつけたえみるが、しがみついて引き止める。さらに制止する、これも駆けつけた京極を、父親は「このことは厚労省に報告させてもらう」と恫喝。それに対し京極は、父親の違法行為を指摘して、引き下がらせる。

 最後には、島岡光の生活保護開始が決定。「私たちは島岡さんの味方です。安心してください」と言うえみるに、島岡も「義経さん。どうもありがとうございました」と告げるのだった。

 ついに視聴率5%割れ(第5話 4.8%,、ビデオリサーチ調べ 関東地区)と、かなり苦戦中のこのドラマ。前回から今回にかけてのネット上のレビューを見てみると、あきらかに精神的な疾患がある島岡光に対し、考慮の足りない職員たちにイライラした視聴者が多かった様子。その職員たちも最後は島岡の事情を汲み取った。

「わかり合えない親子もいる」ということが今回のひとつのテーマとなっていたが、一方で、原作では扶養照会用紙をビリビリに返送されて終わった、生活保護申請中の水原典子のエピソードに、息子の妻が役所を訪れ、息子から手紙と写真が送られて来るという話を付け加えたあたりは、「やっぱり親子は通じ合えるでしょ?」的な、ドラマ的安易さを感じなくもない。

 また全体的には、どうもえみるがおろおろしているところばかりが目立つのだが、ラストまでにはしっかりと成長して、ケースワーカーらしく困難な事例にも落ち着いて対処するところを見せてほしいものである。

里中高志(さとなか・たかし)
「サイゾー」「新潮45」などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

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