ギョーカイ的ドラマレビュー その4

安達祐実を救うのは山田裕貴扮するマザコンケースワーカー?『健康で文化的な最低限度の生活』第4回レビュー

編集部

『健康で文化的な最低限度の生活』第4回のゲストは安達祐実。扮するのは、6歳の娘を持つシングルマザーの岩佐朋美。「生活保護は一時的に受けているだけで、すぐ働けます。面接を受けて採用になりました」という岩佐だが、前の夫からはDVを受けていた経緯があり、精神的にはかなり無理をしている。

 一見はきはきした受け答えのなかに、時折追いつめられた様子を垣間見せる岩佐。この微妙な役を安達祐実がうまく表現している。岩佐が面談している間、義経えみる(吉岡里帆)が彼女の娘と遊んでいると、少女は突然「みっともない! あんたさえいなければ」とつぶやきだす。「お母さんはいつもこう言うんだよ」という少女に、岩佐家の危うさを感じ取るえみる。

 だが、岩佐の担当となったえみるの同僚、七条竜一(山田裕貴)は、岩佐がギリギリの状態であることに気づかない。

 この七条、母子家庭のもとで育ち、同僚と夕食にいくときは、「お母さん。晩ご飯いらないから」と電話をかけ、何かと母親の話をするので、皆から「マザコン」とからかわれている。そして、頑張って女手一つで自分を育ててくれた自分の母親をリスペクトしているがゆえに、頑張らない受給者にはもどかしさを感じて仕方がないと、日頃から公言している。演じる山田裕貴は、2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイブルーでデビューした経歴の持ち主だ。

 仕事は採用になったと七条に言った岩佐だが、それは嘘で実際は不採用だった。状況を確かめる電話にも出てもらえないので連絡が取れなくなった七条は、家を訪問してドアにメモを残す。その後、街中で岩佐の姿を見かけるが、七条を見た岩佐は逃げ出してしまう。

 日を改めて、岩佐の妹が役所を訪問。何度も電話をかけてきたり、家にも来たりした七条を、岩佐はストーカーのように思っているというのだ。「ストーカーなんかしてませんよ!」と、途方に暮れる七条。また別の日に岩佐本人が来ると、「苦しいのは岩佐さんだけじゃないんです。もう一度求職活動をしなおしましょう」と、熱血指導するのだが、岩佐は、お手洗いにいくと言って中座。トイレの窓を開け、立ち尽くす。

 今にも飛び降りそうなその様子を見た義経は、ただ事ではないと感じ、半田明伸(井浦新)を交えて七条と相談する。

「私、この仕事をするまで人の死がこんなに身近だと思っていなかった。七条くんには私のような思いをさせたくない」と言うえみる。生活課に着任早々、担当する生活保護受給者に自殺されたことを言っているのだ。半田は七条に、岩佐に一度精神科を受診してもらうようアドバイスする。

 その岩佐は、保育園で先生から娘の靴がサイズが小さくなっているので、新しいのを買ってあげるよう言われても、靴代を捻出するのもきつい様子。すぐ泣く娘を怒鳴りつけるなど、限界寸前。さらに、スマホでリア充の友人の楽しそうなSNSの画像を見ることで、精神にダメージがかかっている。

 役所に遅くまで残っている七条に、普段は生活保護受給者に対して厳しいことばかり言っている京極大輝(田中圭)が、「俺は母ちゃんが具合が悪くて家にいると、一緒にいられるから嬉しかったな」と自分の経験を話しだす。それを聞いて何かに気づいた様子の七条。そして、そのやりとりを柱の影から聞いていた半田。京極のツンデレぶりを、わかってるよといわんばかりの半田の様子は、『おっさんずラブ』で田中圭にハマった腐女子のための萌えポイントか?

 岩佐に電話をかけ、留守電相手に「いまは頑張らないでほしいです」と告げる七条。受診した精神科の医師は、「岩佐さんを連れてきてくれたのはファインプレーでした。彼女はうつ病です」と、七条に告げる。岩佐は七条に、「あの子を守らなきゃいけないから、いまは求職活動はしないで、あの子のために頑張ります」と告げるのだった。

 生活保護受給者に仕事を探すように促す就労指導はケースワーカーの重要な仕事のひとつ。しかし、今回は七条の「自分が一番岩佐さんのことを分かっている」という根拠のない思い込みが裏目に出て、岩佐を追いつめていた。

 日本におけるシングルマザーの貧困率は高く、社会的にも孤立しがちで苦しい状況に置かれている。そんな彼女たちに、生活保護を受給することをためらわせているのは、「生活保護を受けることは恥だ」という社会的スティグマ(偏見)だ。そんなスティグマの払拭に、このドラマはどのくらい役立てているだろうか。その成否は、これからどのくらいリアリティのある演出ができるかにもかかっていそうだ。

里中高志(さとなか・たかし)
「サイゾー」「新潮45」などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

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