ギョーカイ的ドラマレビュー その2

 埼玉県熊谷市で観測史上最高の41.1℃を記録するなど、歴史的な猛暑となっている今年の夏。もはや室内でエアコンを付けずに過ごすのは自殺行為に等しい。だが、生活保護世帯や貧困層は、電気代がかさむのを恐れて、エアコンを付けないことがたびたびある。それどころか、かつてはクーラーは贅沢品とされて、福祉事務所が取り外したケースすらあったという。

 生活保護制度では、冬には暖房費がかさむことなどを理由とした「冬季加算」という上乗せ支給の仕組みがあるが、「夏季加算」はない。かつて民主党政権時代に長妻昭厚生労働相(当時)のもとで、「夏季加算」新設が検討されたこともあったが、長妻氏退任とともにうやむやになってしまったと『生活保護から考える』(稲葉剛・岩波新書)にある。しかし、このような桁外れの暑さでは、空調の有無は生命に関わる問題であり、改めて夏季加算についても検討すべきかもしれない。

 さて、生活保護ケースワーカー、義経えみる(吉岡里帆)を主人公としたドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』第2回は、不正受給がテーマ。シングルマザーの日下部家を担当することになったえみるだが、日下部家に不正受給の疑いがあることがわかる。高校生の息子、日下部欣也は昨年から回転寿司屋でバイトしていたのだが、その収入を申告していなかったのだ。

 上司の京極大輝(田中圭)から、不正に得た収入は全額返還させるように命じられたえみるは、なんと伝えるべきか途方に暮れる。利用者の立場に寄り添うことと、公務員として生活保護費の厳格な運用をさせなければならないということの狭間で苦しむえみる。苦労して覚えたらしい生活保護法63条の条文をもとに、「一部返還でいいかもしれません」と日下部家の母親に伝えるが、それはえみるの早とちりだった。下手に期待させたことで、ますます状況を悪化させてしまう。

 生活保護受給者がなんらかの収入を得た場合、必ず申告しなければならないのがこの制度の仕組み。収入があるのに、ないときと同じように生活保護費を支給していたのでは、この制度そのものが意味をなさなくなってしまうからそれは仕方ないのだが、高校生の日下部欣也にしてみれば、「自分で頑張ってバイトして、好きなものを買って、何も悪いことをしていないのに、それを全額返せというのは納得できない」というのももっともだ。

 ドラマの中で、半田明伸(井浦新)が言っていたとおり、収入を正直に申告していれば、全額取られる事態にまではなってはいなかった。ただ、生活保護受給者が働いて収入を得て、それを申告するとどうなるかというと、一部は手元に残るものの、その多くは保護費から引かれてしまうというシステム。これでは一種の働き損というもの。頑張ってなんとか働いた数万円が、こうして保護費から引かれて、結局収入は1万数千円しか増えないとなれば、勤労意欲が削がれてしまうのも無理はない。生活保護が「入りにくく抜けにくい制度」と言われるのは、そのあたりの事情も関係している。

 重いテーマを見せやすくしようとしてか、妙に軽いシーンもあちこち差し挟まれる。えみるが馴染みの定食屋に行くと、そこでは第1回でえみるが担当し、生活保護を抜けた阿久沢(遠藤憲一)が働き始めていた。「豚カツの端っこが好き」というえみるのために、次に阿久沢はえみるのために、端っこだけを集めた「豚カツ端っこ定食」を用意していた。これを作るために何人の客が端っこのない豚カツを食べたのだろうか。

 行き場のない怒りに襲われた日下部欣也が、「これって何の罰なんすか? バカで貧乏な人間は夢を見るなってことかい!」と言いながら、バイト代で買ったギターをたたき壊すところで、今回のエピソードは終わった。それにしても、友達とパンケーキを食べているところをSNSにあげている妹のために、バイト代から小遣いを渡している欣也は、なかなか妹思いだ。音楽配信全盛の時代にCDやスピーカーにお金をかけるのも古風な趣味で見所がある。それに対して、ちょっと受給者に詰め寄られると、しどろもどろになってしまうえみるはなんだか頼りない。日下部家に対して、えみるはなんらかの打開策を示すことができるのか。

 原作は登場人物のやるせない感情がひしひしと伝わってきたが、ドラマ版ではどれだけ深みを出すことができるか。次回もチェックしたい。

里中高志(さとなか・たかし)

「サイゾー」「新潮45」などでメンタルヘルスや宗教から、マンガ、芸能まで幅広く書き散らかす。一時期マスコミから離れて、精神に障害のある人が通う地域活動支援センターで働くかたわら、精神保健福祉士の資格を取得。著書に、「精神障害者枠で働く」(中央法規出版)がある。

『健康で文化的な最低限度の生活』第2回レビュー 息子のアルバイトは不正受給になるのか?のページです。エンタMEGAは、連載コラムの最新ニュースをいち早くお届けします。芸能ニュースの真相に迫るならエンタMEGAへ!